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社会人ナンバーワン左腕・田嶋大樹の自覚
原動力は悔しさ、そしてチームのため
都市対抗の開幕直前にも関わらず、リリース時に声を張り上げ、250球の投げ込みを敢行。エースの自覚を胸に大会に挑む
都市対抗の開幕直前にも関わらず、リリース時に声を張り上げ、250球の投げ込みを敢行。エースの自覚を胸に大会に挑む【写真=BBM】

 2017年の「社会人ドラフト候補」は投手に好素材がそろう。その中で今回は最速152キロを計測する、注目度ナンバーワン左腕・田嶋大樹(JR東日本)をクローズアップしよう。

「スタミナ強化」を明確な目標に

 全身の力をボールにぶつけるように、リリース時に声を張り上げる。放たれた直球は糸を引くようにミットに吸い込まれ、ときにブレーキの効いたタテに鋭く落ちるスライダーを交えていく。投じた球数は250。都市対抗開幕を2週間後に控えたブルペンは熱気に包まれていた。


「一番大事にしているのは自分の感覚。投げていかないと、感覚はつかめない」


 大舞台を前にしながら、200球を超える投げ込みの意図を明かしたが、そこには大きな2つの狙いも含まれている。


 一つは常に課題に挙げてきた「スタミナの向上」だ。14年、佐野日大高3年春にセンバツ4強入りも、試合中盤の6回以降に連打を浴びるケースが多く、同年夏の栃木大会決勝は、試合途中に左脇腹を痛めて降板し敗退――。だからこそ「スタミナの強化」を明確な目標に挙げてきた。


 入社1年目はランニングやダッシュを繰り返し、体力向上に努めた一方で、「投げるスタミナは別物。『肩のスタミナ』は、投げ込まないとつかない」と、翌年から徹底した投げ込みを敢行。春のキャンプでは毎日プルペンで100球を投じ、3日に一度はプラス50球を課した。


 社会人3年目の今年は球数をさらに増やした。シーズンに入っても日々欠かさずブルペンに入り、70〜80球を投じるだけでなく、週に一度は200球以上の“投げ込み日”も設け、ノースローの日はなく徹底して投げ込んできた。

フォームのズレを「投げて取り戻す」

 成果は今年5月の都市対抗、東京都二次予選で表れる。明治安田生命との初戦で、被安打5の自責点2で完投すると、中1日でセガサミーとの準決勝の先発マウンドへ。疲労の色も見せず、9安打を許しながらも9つの三振を奪って、1失点完投で第1代表決定戦進出。試合終盤にも140キロ台後半を計測した。


「真っすぐ(のスピード)が落ちなかったし、疲労感もなかった。本当に大きな自信になりました。(堀井哲也)監督にも『勝たせるのがエースの役割』と言われ続けてきたので相手をゼロに抑えていくことを心がけています。それを実現させるには、まずマウンドに立ち続けることが必要。長いイニングを投げることは、エースの役割を果たす最低条件です」


 強調する『投げるスタミナ』とともに向上させたいこともあった。それが、投げ込みを行う2つ目の理由だ。


 今年2月の練習試合では巨人、東北楽天とプロの打者と対戦。「ファウルされたり、前に飛ばされる。簡単に空振りを奪えない」と、結果は2試合で計10回を投じ7失点を喫して、プロのレベルの高さを痛感。「ある程度、プロの打者のイメージを持てました」と収穫も得ながら、“対プロ”以上にフォームのズレを感じていた。


 肩甲骨の可動域が広い田嶋は、独特のテークバックから右腕でしっかりカベを作り、ためたパワーを一気に爆発させる。それが最速152キロのスピードボールを生んでいるが、その“カベ”をつくれず体が開いてしまい、「力が伝わらなかった。そうなると(ボールの)指のかかりも悪くなって。全然ダメでした」。だが、悩むことはなかった。「投げて取り戻すしかない。これも感覚の問題ですから」とブルペンでボールを投じ続けた。悩むよりも、まずは行動する。感覚を大事にするからこそ、投げ込みは欠かさない。

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