プロ注や元プロ、甲子園のヒーローが躍動 白熱の都市対抗は2回戦へ

楊順行

社会人でも群を抜く佐竹の投球術

トヨタ自動車のエース佐竹。34歳というベテランで、今からプロとはいかないまでも、1年間プロ野球にレンタルして、その卓越した投球術が通用するか見てみたいという社会人野球ファンは多い(写真は2015年都市対抗から) 【写真は共同】

 仮に1年だけ、社会人からプロ野球にレンタル移籍ができるものなら見てみたい……トヨタ自動車(愛知県豊田市)・桑原大輔監督と雑談中、そんな話をすると、「私もです」と応じられた。それほど、エース・佐竹功年のピッチングはべらぼうだ。

 優勝した昨年の都市対抗では、5試合中4試合に登板し、先発完投した3試合のうち完封が2。30回を投げて自責点1は、驚異の防御率0.30! 文句なしの橋戸賞(MVPに相当)に輝いている。第88回都市対抗野球は20日から2回戦。トヨタの相手はNTT東日本(東京都)で、佐竹が昨年、唯一点を与えた相手だが、果たして……。

 そのトヨタ自動車には、佐竹のほかにも社会人2年目の藤岡裕大がいい。亜細亜大から入社した昨年、トヨタの内野陣には源田壮亮(埼玉西武)らがいた。まずは試合に出ることを優先した藤岡は、大学時代の三塁手ではなく外野を志願。それでもスタメンに定着し、都市対抗では5試合で打率3割8分1厘と若獅子賞(新人賞)を獲得している。源田が抜けた今季はドラフト解禁年で、「ショート一本で挑戦するつもり」と宣言。九州三菱自動車(福岡県福岡市)との開幕戦は、1対1としびれる展開の延長12回裏、タイブレークでサヨナラ満塁本塁打と派手なアピールをしている。

 また昨年、トヨタに準々決勝で延長10回サヨナラで敗れたリベンジを期すNTT東日本には、ドラフト候補・西村天裕が在籍している。帝京大4年時の左ヒザ手術で、昨年は出遅れた。最速154キロで救援で活躍した今季、都市対抗デビューしたが、三菱重工神戸・高砂(兵庫県神戸市・高砂市)戦は3分の1イニングで3失点。接戦で挽回のチャンスがめぐってくるか。

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プロ注・田嶋は力を抜くことで完封

 上記のトヨタ自動車vs.NTT東日本を皮切り、都市対抗は2回戦に入っていくが、どのカードも興味は尽きない。とにかく、出てくる選手たちが魅力たっぷりなのだ。 

 まずプロ注目といえば、なんといっても田嶋大樹(JR東日本・東京都)だ。佐野日大高(栃木)から社会人入りすると、1年目から公式戦に登板し、2年目でチームの大黒柱に。球速は152キロに達し、もともと定評のあったカーブ、スライダーに加え、今季からはチェンジアップとカットボールで幅を広げた。昨年の都市対抗は延長10回を完投しながら初戦で涙を飲んだが、今季は伏木海陸運送(富山県高岡市)をわずか1安打で完封。

「以前なら三振ばかりを狙い、球数が増えて野手のテンポも悪くなった」(田嶋)ところを、序盤から変化球を効果的に使う打たせて取る投球で、三塁を踏ませない投球はわずか112球だ。「ねじ伏せるだけではなく、力を抜くことで幅が広がりました」とは、女房役の石川修平だ。2回戦の相手は三菱重工名古屋(愛知県名古屋市)で、ベテラン捕手にして主将の安田亮太は、高校野球で清宮幸太郎(西東京・早稲田実)と並び称される超高校級スラッガー・安田尚憲(大阪・履正社高)の兄。尚憲にいわせると「野球の師匠です」。

元・巨人の加治前が勝ち越し打

巨人時代に史上初となるプロ初打席サヨナラ本塁打を放った加治前。現在は三菱日立パワーシステムズで現役を続けている。今年の都市対抗初戦では代打で勝ち越しタイムリーを放った 【写真は共同】

 その三菱重工名古屋は初戦、昨年の準優勝・日立製作所(茨城県日立市)を破っているが、光ったのは”元プロ”の活躍だ。まず初回、元東京ヤクルトの佐藤二朗(ヤマハからの補強)がプロ注目速球派・鈴木康平から「スライダー」(佐藤)をレフトに2点タイムリー二塁打。続く元中日・中田亮二(JR東海からの補強)もタイムリー。中田は8回にも貴重な犠飛を放ち、チーム5得点中、この元プロの補強選手2人で4打点を稼いでいる。

 三菱日立パワーシステムズ(神奈川県横浜市)で、日本生命(大阪府大阪市)を相手に、逆転打を放ったのが元巨人の加治前竜一だ。足を痛めて先発からは外れたが、同点に追いついた8回2死一、二塁からとっておきの代打。「真っすぐに力がある。高めを振らないように」と、速球派左腕・坂本光士郎(新日鐵住金広畑からの補強)の低めストレートをはじき返したのは、2008年に巨人で史上初のデビュー打席サヨナラ本塁打を放ったベテランの読みか。この一打で、三菱重工長崎と統合した新生チームが都市対抗初戦を飾っている。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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