異文化が共存する寛容の街 コンフェデ杯都市探訪<カザン篇>

宇都宮徹壱

来年の本大会で最も心配なのはロシア代表?

必勝を期してロシアのサポーターは、歴代レジェンドを描いたビッグフラッグを掲出 【宇都宮徹壱】

 カザン3日目の24日、再びカザン・アリーナに向かう。この日はグループAの第3戦。3位に甘んじている開催国のロシアは、この時点で首位のメキシコに勝たなければコンフェデ杯は終了となってしまう、非常に重要な一戦である。試合前に観光スポットであるバウマン通りを訪れてみると、チリと入れ替わりでやってきたメキシコサポーターに混じって、多くのロシア人サポーターをあちこちで見かけた。彼らが掲げているロシア国旗には、「Saratov(サラトフ)」とか「Smolensk(スモレンスク)」といった地名が描かれていて、カザン以外の都市からサポーターが駆け付けていたことが分かる。ロシア人のナショナルチームへの思い入れというのを、実は少しばかり測りかねていたのだが、なかなかどうして気合いの入ったサポーターが少なくないようで安心した。 

 試合は、序盤からロシアがペースを握る。前半25分、左サイドからのアレクサンドル・ゴロビンのクロスにアレクサンドル・エロヒンが反応。いったんは空振りするも、すぐに右サイドにパスを送り、これをアレクサンドル・サメドフがゴールに流し込む。3人のアレクサンドルの連係で先制したロシア。だが、その歓喜は5分しか続かなかった。

 メキシコは前半30分にネストル・アラウホ、後半7分にイルビング・ロサノがゴールを決めて逆転に成功。いずれも後方からエクトル・エレーラがロングボールを蹴り込み、ロシアGKイゴール・アキンフェエフが目測を誤ったところにヘディングで決められるというパターン。「ロシア! ロシア!」という地元の大声援も虚しく、そのまま1−2のスコアでタイムアップとなり、メキシコの2位通過とロシアのグループリーグ敗退が決まった。

 ロシアにとっては、いささかアンラッキーな試合だった。前半に2回、ペナルティーボックス内で選手が倒されたシーンはいずれもPKとはならず、後半23分にはユーリ・ジルコフが2枚目のカードで退場となっていたからだ。とはいえ、コンフェデ杯で開催国がグループリーグを突破できなかった事実は重い(01年大会の韓国以来16年ぶり)。

 ロシア代表のスタニスラフ・チェルチェソフ監督は、試合後の会見で「われわれは正しくステップアップしている」と語っていたが、今大会の戦いを見る限り、説得力を欠いていると言わざるを得ない。ロシアに来て間もなく1週間。施設の建設が遅れていたブラジルや、治安に不安があった南アフリカと比べると、今のところストレスを感じることなく試合を楽しめている。それだけに、結果を出せないロシア代表が大いに気になるところ。いずれにせよ開催国不在の状態で、大会がクライマックスを迎えることになるのは非常に残念でならない。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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