選択を迫られるトップレベルの選手たち “ネズミの頭”か“ライオンの尻尾”か――

モラタと同様の立場に置かれているハメス

コロンビアのスターであるハメス(中央)もモラタと同様の問題を抱えている 【Getty Images】

 ハメス・ロドリゲスもモラタと同様の立場に置かれている。14年のワールドカップ・ブラジル大会では最優秀選手に選ばれてしかるべき活躍を見せたが、レアル・マドリーへの移籍はプレー時間の減少と評価の下降をもたらしただけだった。

 それでもピッチに立った際には優れた才能を十分に発揮してきただけに、コロンビアのスターは新天地を求めている。移籍先としては、やはりマンチェスター・ユナイテッドが名乗りを上げているようだ。

 一方のレアル・マドリーもムバッペのような新たなスターを獲得すべく、モラタとハメスの売却で補強資金を稼ごうと考えている。プレー機会を求めるヒエラルキー下位の選手たちの移籍を促し、空いた枠を使って未来のスター選手と契約するという意図は理解できる。だが、新戦力を先発に据えるのであれば、やはり同様の問題が生じてしまう。ベンゼマをどうするかだ。

デウロフェウはクラブの意思を聞いた後も、バルセロナに復帰すべきか悩んでいるようだ 【Getty Images】

 同様の問題はバルセロナも抱えている。

 ジェラール・デウロフェウの復帰有無はモラタと似たようなケースだ。数年前に“ラ・マシア(バルセロナの旧選手寮であり、下部組織の総称)の新星”として現れたものの、彼はトップリーグで確固たるキャリアを築けぬまま、期限付き移籍を重ねてきた。昨季はミランでプレーしたカンテラーノ(下部組織出身選手)について、クラブは過去にジェラール・ピケやセスク・ファブレガスを買い戻したように、今夏に呼び戻すことを検討している。

 モラタとは異なり、デウロフェウはクラブの意思を聞いた後も復帰すべきかどうか悩んでいる。リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールのトリデンテ(3トップ)が君臨しているバルセロナの前線において、継続的なプレー環境など期待し難いことだからだ。

有能なバックアッパーの補強は困難に

サンドロ・ラミレス(左)は新天地で上々の結果を残し、自身の市場価値を高めることに成功した 【Getty Images】

 ベンチで飼い殺しにされるのか、ローテーションに組み込まれるのか。けが人や出場停止選手の代役となるのか、終了間際に使われるだけなのかは分からない。いずれにせよ、ミランでは先発を維持し、ほぼ常にプレーしていただけに、彼もやはり“ライオンの尻尾”か“ネズミの頭”かの選択を迫られているのである。

 サンドロ・ラミレスも同様の選択を迫られた1人だ。バルセロナではほとんど出番を与えられなかった彼は、自身の価値を証明すべく移籍先にチャンスを求めた。そうしてマラガで上々の結果を出した彼は選手として成長しつつ、自身の市場価値を高めることに成功している。

 再びバルセロナがレアル・マドリーと競いながら長いシーズンを戦い抜くためには、ベンチメンバーの質を高める必要がある。しかし、有能なバックアッパーの補強は年々難しくなっている。多くの出番が得られる見込みがなく、ベンチに座り続けることも厭(いと)わない選手など、そう簡単に見つかるものではない。

 両クラブの強化担当は、この重大な問題が致命傷となる前に解決策を見いださなければならない。

 昨季のバルセロナの二の舞になりたくなければ。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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