日本ハム・近藤健介の打撃論 夢の4割へポイントは「右足を優しく」

週刊ベースボールONLINE

左膝で“タメ”をつくり、右足は「優しく」ステップ。この形をつくれていることが打率4割につながっている 【写真=BBM】

 この男のバットが止まらない。開幕から苦しむチームにあって、1人驚異的な打撃で孤軍奮闘しているのが北海道日本ハム・近藤健介。6月9日時点で打率は依然として4割を超え、日本球界初の「4割打者」誕生への期待も高まっている。打撃覚醒の秘密はどこにあるのか。そこには若きヒットメーカーの驚くべき打撃理論があった。

左膝と下半身に99.9パーセント意識

 長き日本プロ野球の歴史の中で誰も達成したことのない「打率4割」。過去のシーズン最高打率も1986年にバース(阪神)がマークした3割8分9厘であり、シーズン最長記録もクロマティ(巨人)が89年に記録した96試合がトップだ。海の向こうのメジャー・リーグを含めても、76年間現れていない4割打者。その高き壁に挑む23歳はいま何を思うのか。

──開幕からすでに50試合近くを経過した現在も打率4割超をキープしています。ズバリ、ご自身では何が好調の要因だと思っていますか。

 技術的なことで言えば、一番はやっぱり軸足でもある左ヒザの不安がなくなったことですかね。昨季はケガをしてしまってタメをつくれなかったんですけど、今季はそれがしっかりとできている。それこそ左膝と下半身に99.9パーセントぐらいの意識を置いて打っています。

──軸足の“タメ”がポイントだと。

 間違いなくそうですね。昨季はそれがつくれなかったので、打席でもただ突っ込むだけというか、ボールに衝突してしまっていた。でもいまは軸足にしっかりと体重を残せて打てていますし、それこそ足でバットの軌道をつくっているイメージなんですよね。だから上半身はほとんど意識していません。

──踏み込む右足の意識は?

 右足はとにかく、優しくです。

──優しく……ですか。

 そう、優しくです(笑)。左足にタメをつくって、そのパワーをバットに伝えていくわけですけど、そこで突っ込み過ぎてしまうと今度は体重が前のめりに乗り過ぎてしまうんですよね。左足に体重は残しつつ最後は体の軸でしっかりと回りたいので、本当に右足は優しくステップするぐらいの意識なんです。

──右足でしっかり踏み込んで“壁をつくる”というのがオーソドックスな打撃の形かと思いますが、その感覚的とは少し違うのでしょうか。

 バットに力を伝えるためには壁はもちろんつくらないといけないんですけど、それよりもスムーズな体重移動とタイミングのほうが大切だと僕は思っています。それさえできていれば強い打球も打てますし、軸足に体重を残すことでボールの見え方も全然違いますからね。

──今季は四球も大幅に増えて高い出塁率を誇っていますが、それも下半身への強い意識が関係している?

 間違いなくその部分が影響しています。左足のタメによってボールが長く見れていますし、その時間で振る準備も自分の中でできるようになりました。同時に精神的にも余裕が生まれ、タイミングも取りやすくなったと思います。

──そのバッティングはすべて自分で考えて取り組んできたのですか。

 もちろんコーチの方にもアドバイスはもらっていますけど、基本的には自分でオフから試行錯誤しながら考えてやってきました。昨季はチームは10年ぶりの日本一になりましたけど、僕自身は本当に不甲斐ない1年に終わってしまったので。その悔しさ、危機感も大きな原動力になっています。

──その中でペナントレースの開幕前には「首位打者」という大きな目標を掲げました。

 昨季も目指してはいたんですけど、今季は自分自身をさらに奮い立たせるためにも公言してやっていこうと思ったんです。チームには僕より若い選手も毎年のように入ってきていますし、その中で「自分の存在意義って何だろう」と考えたときに、やっぱり打ってナンボの選手だと思うので。これからも理想のバッティングを追い求めて、とことんこだわってやっていきたいです。

SB・長谷川&中村晃からアドバイスも

周囲は夢の4割打者誕生へ色めき立つも、本人は至って冷静だ 【写真=BBM】

──近藤選手が考える理想のバッティングとは?

 やっぱり甘いボールを1球で仕留められることですよね。配球の中で厳しいボールもあれば、誘い球もあるわけですけど、そこでいかに自分の「間」であったり、良いタイミングで甘い球を確実にとらえられるかが勝負になってくるので。それこそ4割打っても6割、3割打っても7割は失敗するのがバッティングですし、その中でいかに確率を上げていけるかを考えて、これからもやっていきたいです。

──今季はデータを見てもストライクゾーンすべてでほぼ高い数字を残していますが、特に苦手なコースはない?

 なかったらそれこそ10割打てるかもしれないですし、それはもちろんあります。ただ、それでも今季に関しては厳しいボールをファウルで逃げたり、打てなくても粘って四球を選ぶことができているので、何とかこういった数字もついてきてくれているのかなと。

──日を追うごとに周囲の「打率4割」へ向けた報道も過熱し始めていますが、気にはなりますか。

 プロ野球選手なのでそれは当然のことですし、その中で僕は結果を出していくだけですよね。それに打率って上下するものなのであんまり気にもしてないですし、むしろ自分のスイングでしっかり打てれば、仮にアウトになってもいいとも思っています。これからもそこはブレずにやっていきたいです。

──自分以外の左打ちで良いバッターだなと思うのは誰ですか。

 いっぱいいますけど、福岡ソフトバンクの長谷川(勇也)さんと中村(晃)さんですかね。長谷川さんは過去に首位打者も取られていますし、本当に技術や打撃理論が確立している方なので。アドバイスを聞きに行くことも多いですし、体の使い方などもいつも勉強にさせてもらっています。結構、僕は聞き魔(聞き上手?)なので(笑)。

──チーム内には大谷翔平という左バッターもいますが。

 ああ、いますね。とてつもない異次元なヤツが(笑)。

──自分とはタイプが違う?

 全然違いますね。あれだけボールを飛ばせる能力というのはもう天性のものですし、もはや参考にもならないですよね、すご過ぎて(苦笑)。だから感化されたりすることもないですし、アベレージとかでもアイツと勝負しようと思うこともないです。

──大谷選手の打撃は何が一番すごいと思いますか。

 すべて。長打だけでなく、ちゃんと柔らかさもあるので打率も残せますからね。本当にアイツがバッターだけに専念したらどれぐらい打つんだろう……という興味は正直ありますよ。持っている能力ではもう太刀打ちできないので、僕は僕らしく地道にやっていきます(笑)。

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