阪神の糸井&桑原が古巣相手に魅せる!? 今年の“関西ダービー”の見どころ

山田隆道

一時のドン底からは脱したが…

オリックスからトレードで阪神へ移籍した桑原。今季覚醒したセットアッパーがオリックスを封じるか!? 【写真は共同】

 また、糸井本人にとっても力が入る3連戦となるだろう。開幕から2カ月以上が経過した現在、糸井の成績は全52試合に出場して打率2割7分2厘、7本塁打、37打点、7盗塁。糸井クラスの選手は打率3割以上でないと物足りないと思われてしまいがちだが、持ち前の選球眼の良さを生かした出塁率になるとリーグ4位の3割9分4厘。チーム内でも鳥谷敬の3割9分7厘に次ぐ数字であり、決して悪いわけではない。実際、開幕当初は3試合連続ホームランを放つなど、印象に残る派手な活躍も多かった。

 それでもマスコミの注目度が高い阪神だけに、少し打てない時期が続くと、どうしても騒がれてしまう。糸井も5月に調子を落とし、自己ワーストの7試合連続(28打席連続)無安打無出塁という不振に陥ったときは厳しい声にさらされた。現在は一時のドン底からは脱したようだが、糸井本人はまだまだ満足していないだろう。

金子を打ち崩してこそのFA移籍

 そんな状況の中、いよいよ今日から古巣・オリックスとの関西ダービー3連戦に挑むわけである。虎の糸井にしてみれば、ここで「打って走って守って」の超人らしい大暴れをして、古巣の選手やファンに存在感を見せつけたいところだろうが、その古巣は先述したように現在7連勝中で、交流戦も6勝無敗。ただでさえ絶好調のうえ、初戦にいきなりエース・金子千尋の予告先発が発表されている。まちがいなく、手強い相手になるだろう。

 だが、そういう難敵を打ち崩し、チームに新しい力を与えることこそ、高額契約のFA選手に求められる要素だから、糸井にとって今年の関西ダービーは実に意義深い。ここでの糸井の活躍いかんによって、今後の阪神の気流も変ってくるのではないか。オリックスにとっても、チームの状態が良い今だからこそ、糸井を黙らせたいところだろう。

苦労人・桑原の登板にも注目

 また、今年の関西ダービーには注目株がもう一人いる。14年オフに交換トレードでオリックスから阪神に移籍した右腕・桑原謙太朗。ご存知、今季の阪神リリーフ陣の中で最大級の働きを見せている、プロ10年目の苦労人セットアッパーだ。

 この桑原が今季ここまでの活躍をするとは、いったい誰が予想できただろうか。11年〜14年まで在籍したオリックスではほとんど活躍することができず、阪神移籍後もしばらくは鳴かず飛ばず。しかし、昨季ウエスタンリーグで好成績(29試合1勝3敗2S・防御率2.42)を残し、今春のオープン戦でも好投を続けると、金本知憲監督から勝ちパターンのリリーフの一角を任されるようになった。今季ここまで25試合に登板して3勝1敗11H、防御率1.13。4月〜5月にかけて16試合連続無失点も記録し、今やドリス、マテオとともに虎のブルペンを支えている。

 これには阪神ファンのみならず、オリックスファンも驚いていることだろう。31歳という遅咲きながら、見ちがえるような覚醒を果たした桑原が、古巣・オリックスとの関西ダービーに挑むべく、京セラドーム大阪に凱旋する。金本監督が「和製リベラ」(米大リーグ・ヤンキースで活躍したストッパー)と呼ぶ桑原特有の高速スライダーが、小谷野栄一、中島宏之、T−岡田といった実績豊富な打者が並ぶ猛牛打線相手に通用するのか。それもまた今年の関西ダービーの見どころだ。

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著者プロフィール

作家。1976年大阪生まれ。早稲田大学卒業。「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」などの小説を発表するほか、大の野球ファン(特に阪神)が高じて「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。現在、文学金魚で長編小説「家を看取る日」、日刊ゲンダイで野球コラム「対岸のヤジ」、東京スポーツ新聞で「悪魔の添削」を連載中。京都造形芸術大学文芸表現学科、東京Kip学伸(現代文・小論文クラス)で教鞭も執っている。

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