ハイプレスに苦戦し後手に回った日本 U-20W杯 ベネズエラ戦をデータで分析

清水英斗

危険なシーンは立ち上がり30分間に集中

【データ提供:データスタジアム】

 U−20ワールドカップ・決勝ラウンド16、U−20ベネズエラ代表と対戦したU−20日本代表は、90分をスコアレスで終えた後、延長後半3分に失点。0−1で惜敗し、大会を去った。

 立ち上がりは日本が劣勢。ハイプレスとフィジカルを生かした突進で、ベネズエラはぐいぐい押し寄せてきた。序盤の15分、日本のペナルティーエリア内でベネズエラにプレーされた回数は4回、16〜30分は5回もあった。その後は延長戦に入るまで、ベネズエラをゴールに近づけさせなかったが、日本にとって危険なシーンは序盤に集中していた。

ベネズエラ戦の先発メンバー 【スポーツナビ】

 16〜30分は日本のポゼッション率が58%に上がっているが、前に出てボールを奪う意識が高いベネズエラの守備に引っかかり、カウンターを食らう様子も散見された。前に出て奪う意識が強いため、ベネズエラはボランチの裏にスペースが空きやすいが、中央に絞ってくる堂安律や三好康児に縦パスを入れても、DFがガッツリと前に出てつぶしてくる。このパターンを警戒されているのも間違いなかった。

押し込まれ重心が後ろになった日本

日本代表の90分間でのプレーエリア別ヒートマップ 【データ提供:データスタジアム】

 この試合の日本のプレーエリアを見ると、グループステージに比べて自陣でボールを回す回数が増えていることが分かる。過去3試合はミドルサードで多くのプレーを記録した日本だが、ベネズエラのハイプレスに苦戦し、その比率が自陣寄りになった。

日本代表の延長戦も含めたプレーエリア別ヒートマップ 【データ提供:データスタジアム】

 右サイドで利き足にボールを置いてキープできる堂安はファールを受けて味方を助けたが、三好はそれもままならず、ボールロストが多かった。後半9分に右利きの遠藤渓太に代えたのは妥当な采配だった。もっと堂安や三好をワンタッチでサポートできるポジショニング、あるいは速くボールを回してプレスをかわすクオリティーなど、日本が向上させるべき点は多い。

 押し寄せられ、押し込めず、苦しい展開だったことは確かだ。ただし、日本はベネズエラに決定機と呼べるほどのチャンスをあまり作らせていない。サイドを突破される場面もあったが、最終的にはDF陣とGKが中央で防いでいる。グループステージではミスが多かった最終ラインだが、この試合は安定感が増し、ベネズエラの猛攻を受け止めた。これが4試合目の効能か。

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著者プロフィール

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書は「欧州サッカー 名将の戦術事典」「サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術」「サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材では現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが楽しみとなっている。

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