首位阪神の鍵を握る男・大和 球界一“器用な男”の挑戦

ベースボール・タイムズ

二遊間争いでチャンスが訪れる

5月14日のDeNA戦、9回に左前打で出塁すると、福留のタイムリーで決勝のホームを踏んだ大和(左) 【写真は共同】

 内外野で高い守備力を発揮する背番号「0」。開幕直後から二遊間を務めてきた上本博紀&北條史也が打撃不振やけがなどで攻守においてパフォーマンスに不安を残す中、それまで守備要員だった大和が5月14日の横浜DeNA戦(横浜)に「2番・セカンド」として今季初のスタメン出場。いきなり2安打をマークした。その2日前の12日には途中出場でセカンドに入ると、9回の守備で、右中間を破る一打で一気に三塁を狙った荒波翔を見事な中継プレーで刺した。送球を受けてから投げるまでの速さ、送球自体の強さもさることながら、ベース上を射抜く正確さは圧巻だった。

 その翌週、甲子園に戻った16日の中日戦ではショートのポジションに就いた。すると2回、この日初めての守備機会で平田良介の放った平凡なゴロが手につかず。大和にとってはファインプレーより遥かに珍しいエラーを記録。試合後には「エラーですね。セカンドばっかりやっているので足がなかなかショートの動きにならないです」と反省の言葉が口をついた。

 だがこのミスには理由がある。ショートを守ったのは、沖縄ではなく高知でシーズンインに備えていた2月19日のJR四国戦と同23日の埼玉西武戦のみ。3月以降は全く守っていない。試合前練習でショートのポジションに入ってノックを受けて調整したものの、気の毒な面があるだろう。

大和にしかできないプレーを連発

 じつはこの試合、大和は2つの“大和ならでは”のプレーを披露している。

 5回の先頭打者として注目の左打席に立つときれいなセンター返しで出塁。すると、続く糸井嘉男の打席で盗塁を仕掛けた。二塁到達は送球の方が速く、タイミング的には分が悪い。そこで大和は左足を伸ばしてのスライディング、と見せかけた体勢から体をひねって左足を遠ざけて追いタッチを誘い、その間に右足をベースに伸ばした。

 予想外の大和の身のこなしに審判は迷いながらアウトのジャッジを下したが、かなり際どい判定だった。このスライディングは、練習して身につけた技術ではなく、とっさの判断によるものだという。

 守備でも魅せた。9回1死一塁からゲレーロの放った大飛球を、レフト・高山俊がフェンスにぶつかりながらジャンピングキャッチ。大和は二塁ベース後方で高山からの送球をカットすると、体を右中間方向に傾けながらのランニングスローに近い形で一塁へ送球。決して満足とは言えない体勢からドンピシャのワンバウンド送球で大きく飛び出していた1走・平田を刺してみせた。

 ゲームセットを告げる大和の好送球に「後ろチラッと見とったからね」と高代延博ヘッドコーチ。念押しの意味を込めて「大和がセンターラインに入ると安心感がありますね」と投げかけると、間髪入れず「あります、あります」と大きく2回うなずいた。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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