首位阪神の鍵を握る男・大和 球界一“器用な男”の挑戦

ベースボール・タイムズ

対右投手では打率3割6分4厘

5月14日のDeNA戦、生還した大和を迎える金本監督 【写真は共同】

 課題の打撃でも今季は新たな進化を見せている。昨季のシーズン終了後、30歳を目前にスイッチヒッターに挑戦。春季キャンプでは両打ちの先輩でもある西岡剛に、連続写真を見ながらアドバイスをもらうなど試行錯誤を繰り返した。

 左打席ではバットを指2、3本分短く持ち、打撃練習では三遊間へのゴロも狙う。左打ちの手応えを「少しずつ、ですね。当てれば何とかなるので、当てることを意識しています」と語る。今でこそ球界屈指と言われる外野守備にも、慣れるまでには1年かかったという大和。スイッチ転向半年時点での慣れ具合は「守備の方が早いですよ」とまだまだ発展途上だが、開幕後でもしばらくはマシン相手のバント練習でうまく転がせずに後ろにファウルが飛ぶことも少なくなかった状態から、今季初スタメンを飾った14日のDeNA戦の第4打席、左打席でパットンの初球を捉えて見事にレフト前に弾き返した。

 25日時点での打席成績は22打数7安打の打率3割1分8厘。対左投手の打率2割7分3厘(11打数3安打)に対して、対右投手は打率3割6分4厘(11打数4安打)。まだ打席数自体が少ない状況だが、失敗を恐れない新たなチャレンジが、打者としての殻を破ろうとしている。

ファンの願いは「大和が3人欲しい」

 チームは5月中旬に最大貯金12を作るなど好調なスタートを切った。5月6日の広島戦で球団史上初めて9点差を逆転するなど打線は力強い反発力を見せ、投手陣は高橋聡文、桑原謙太朗、マテオ、ドリスのリリーフ陣が盤石リレーを披露している。

 ただ、ペナントレースはまだまだ長く険しい。その中での最大の不安要素が失策数の多さに現れる守備面である。最近になってEランプを灯さない試合も増えてきたが、依然として今季のチーム35失策は12球団ワースト。DH制のある交流戦ではセ・リーグでの戦い以上にどのチームも攻撃力が増す中、取れるアウトは確実に取っておかないと、わずかな傷口から大出血する危険性をはらんでいる。そしてこの不安要素を取り除くためには、久慈照嘉内野守備走塁コーチも「言うことないです」と大絶賛する大和の存在が重要になる。

「セカンドの方が居心地いいだろうけど、チームの中で競争していいんじゃないですか。去年の広島がそうだったし、うちも頭から行ける選手がそれだけ増えたということ」と久慈コーチは語るが、阪神ファン共通の願いは「大和が3人欲しい」である。

「セカンド・大和」、「ショート・大和」、「センター・大和」。そんな布陣が組めたらどれほど心強いだろう。阪神が前回優勝した2005年秋の高校生ドラフト4巡目指名を受けてプロ入りした男が持つ、オンリーワンの守備力にセンスの光る走塁、そして新たに身につけた左打席からのスイング――。12年ぶりの優勝を狙う金本阪神において、大和の存在は単なるスーパーサブでは収まり切らない。

(小中翔太/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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