遠く離れた島国の少年を預かり、それぞれの立場からそっと背中を押してきた２人。成長を見守ってきたその選手が世界のトッププレーヤーとなり、世界ランキング４位まで駆け上がった喜びはひとしおだろう。一方で、陰にある苦労も見てきたからこそ、リスペクトの気持ちも忘れない。ヴァン・リンドンクはこう賛辞を贈る。

「誰もが圭みたいに賞金を稼ぎ、大成功を収め、スタジアムでプレーし、タイトルを手にしたいと思うでしょう。でも、彼はその分さまざまなものを犠牲にしてきました。だからこそ圭には、そういった名誉を得る権利があると思います」

　錦織の挑戦は終わらない。トップ１０の座を揺るぎないものにした今、グランドスラム制覇の期待はますます高まる。今後さらに勝ち進んでいくためには、「（体格で劣る分）フィジカル面でのハードワークが必要」とはボロテリーの弁。そして「彼自身もそれをよく理解している」と付け加えた。一方、今も現場で“チーム錦織”を切り盛りするヴァン・リンドンクは、ともに悲願を達成すべく、最大限サポートするつもりだ。

「最終的には彼にとってベストのチームを作ってあげたいと思っています。ＩＭＧアカデミーの設備はもちろん素晴らしいですが、圭には世界中をツアーし、優秀なプレーヤーたちと戦い、快適なホテルに滞在してもらって……つまり、テニスだけに集中できる環境を用意してあげたいのです。圭が考えるべきことは試合とトレーニングだけ。後はすべて私が対応します。彼には何の心配もさせたくないんです」

　天与の才を見抜いたボロテリーと、傍らで常に支え続けてきたヴァン・リンドンク。さらなる可能性を信じてやまない２人に、錦織はどんな進化を見せられるだろうか。

（取材・文：小野寺彩乃／スポーツナビ）


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