内村航平、プロ転向の難しさ克服し9連覇 環境の変化にも動じない天性の集中力

矢内由美子

年齢による衰えをカバーするための工夫

佐藤寛朗コーチ(左)とは日頃から連絡を取り合い、常に体操のことを考えプロ意識を持って生活している 【写真:アフロスポーツ】

 集中力という変わらぬ強さがある一方で、年齢による体力の衰えをカバーするために変えたこともあった。今年に入ってから鉄棒のしなりを調整するワイヤーの強度を以前より緩めたこともそのひとつだ。これにより、離れ業の「屈伸コバチ」の高さを、楽に出せるようになり、持ち味であるダイナミックさを際立たせるという効果を生んだ。

 強度に関してはまだ試行錯誤中というが、佐藤寛朗コーチによると、「ワイヤーを緩めることで体への負担が少なくなったと本人も言っていた」と、手応えはある。佐藤コーチは「オフの日にも技のことについてLINEで連絡が来たりするなど、日頃からプロ意識を持って生活していると感じる」と話す。

世界選手権では再び仲間たちとともに

世界選手権では再び日本代表の仲間たちと戦うことに。「いろいろなことを健三に教えられると」と心待ちにしている 【赤坂直人/スポーツナビ】

 4月の全日本個人総合選手権で10連覇を達成したときは、1人で登壇した優勝者会見の席で「負けた方が楽。もう、地獄ですよ」と、勝ち続ける者ならではの苦しみも吐露した。けれども今回の会見では、2位に入って初めて個人総合での世界選手権出場を決めた白井を横に、こう言った。

「世界選手権(の出場権を獲得するの)は(田中)佑典か健三かどっちかなというのがあった。大会前に健三と連絡を取っているときに『僕はしっかり佑典さんをとらえる準備はしています』と言っていたので、これは健三がいくかなと思っていたら、自分も食われそうになった(笑)。世界選手権は楽しみしかないですね。同じ一班で一緒に回って、いろいろなことを健三に教えられるといい」

 王者に楽しそうな笑みが戻った。

第56回体操NHK杯・最終日スライドショー


(写真:赤坂直人/スポーツナビ)

2/2ページ

著者プロフィール

北海道生まれ。北海道大卒業後にスポーツニッポン新聞社に入社し、五輪、サッカーなどを担当。06年に退社し、以後フリーランスとして活動。Jリーグ浦和レッズオフィシャルメディア『REDS TOMORROW』編集長を務める。近著に『ザック・ジャパンの流儀』(学研新書)

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント