バレー・クラブ世界女王に輝いた名将 銀河系軍団を率いるグイデッティの熱情

月刊バレーボール

自信をのぞかせていたグイデッティ

世界トップレベルのプレーヤーを擁して、頂点を目指したジョバンニ・グイデッティ監督(中央奥) 【写真は国際バレーボール連盟より】

 5月9日から神戸にて開催された「FIVB世界クラブ女子選手権」。14日に閉幕したクラブ世界一決定戦は、トルコの強豪チームであるワクフバンク・イスタンブールが4大会ぶり、2度目の優勝を飾った。

「簡単な試合はありません」

 今大会が始まる前に、ワクフバンクを率いるジョバンニ・グイデッティ監督はそう口にしたという。

 チームはトルコ代表の主力選手を中心に、昨年のリオデジャネイロ五輪で金メダルとMVPを獲得したスパイカーのシュ・テイ(中国)や、オランダのロンネケ・スローティス、米国のキンバリー・ヒルといった各国代表のエース級の選手がそろっている。4月下旬にはヨーロッパチャンピオンズリーグを制覇した“銀河系軍団”だが、グイデッティ監督は努めて冷静に、それでも自信をのぞかせていた。

「いま、私たちは心身共に良い状態にあります。もちろん日本へは、大会を制するために行きます」

 今回の世界クラブ選手権は8チームが参加し、まずは4チーム総当りによる予選グループ戦が行なわれた。ワクフバンクが入ったAグループは、ディナモ・モスクワ(ロシア)、レクソナ(ブラジル)、久光製薬スプリングス(日本)が名を連ねていた。

 大会のマッチナンバー1(開幕戦)で、ロシアリーグ王者のディナモ・モスクワと対戦したワクフバンクはストレート勝ちを収めた(3−0)。世界の頂点に向けた好発進に満足げな表情を浮かべる一方で、グイデッティ監督はふたたび強調するのであった。

「いいスタートを切れましたが、明日は簡単な試合にはならないでしょう。楽しみにしています」

 第2戦の対戦相手は南米クラブ選手権王者。男女のブラジル代表監督として、五輪のメダルを6つ(金2つ、銀2つ、銅2つ)獲得したベルナルド・レゼンデ氏が指揮するレクソナだった。

戦術家でありモチベーター

ベストアウトサイドスパイカーとMVPに輝いたシュ・テイを、グイデッティ監督は“フェノーメノ(超常現象)”と評した 【写真は国際バレーボール連盟より】

 グイデッティ監督は対戦前に、相手チームを徹底的に研究する。レクソナ戦に向けては6試合分を見たというが、それ自体は「どの試合でもやっていること。私は毎回、そのようにしています」とのこと。

 試合ではブロックが効果的に決まり、積み上げたブロックポイントは合計19(対するレクソナは5)。ワクフバンクのキャプテン、ギョズデ・クルダル(トルコ)は「監督の戦術が機能したことで勝利できました」と語った。

 策士としての手腕がレクソナ戦から見てとれた。ただ、グイデッティ監督は試合後に選手たちへの賛辞を惜しまなかった。

「戦術だけでは勝てません。大事なのは何を研究するのかではなく、実際にコート上で何をするか、です。私のメッセージを選手たちがよく理解してくれました」

 第3戦で久光製薬をストレートで破り、ワクフバンクはグループAを首位通過した。続くセミファイナルの相手は、世界クラブ選手権2連覇中のエジザジュバシュ・イスタンブール。トルコリーグにてフランチャイズを同じくするチームによる、“イスタンブール・ダービー”が神戸の地で実現した。

 ワールドクラスのダービーマッチは、コート上で激しい火花が散った。エジザジュバシュのポイントゲッター、ティヤナ・ボシュコビッチ(セルビア)が強烈なスパイクで、この試合において両チーム最多となる20得点をマーク。一方で、ワクフバンクは攻撃陣が奮闘すると同時に、的確な選手交代策を繰り出し、3−1で勝利を収めた。

 手の内を知り尽くしたもの同士、それでもグイデッティ監督は「あくまでも世界クラブ選手権の準決勝。この大会の初戦であるかのような気持ちで戦います」と臨んでいた。そして、「勝利の秘訣(ひけつ)は?」との質問に、こう試合を振り返った。

「とにかくあきらめないこと、リードされていても必ずファイトすること。今日はよくできていました。選手たちを誇りに思います」

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著者プロフィール

1947年創刊。バレーボールの専門誌として、その黎明期から今日まで、日本のバレーボールを取り上げ、その報道内容は、全日本、Vリーグはもちろん、小・中・高・大学生、ママさんまで、多岐に渡る。

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