バレー・クラブ世界女王に輝いた名将 銀河系軍団を率いるグイデッティの熱情

月刊バレーボール

パッションとユーモアを併せ持つ

「選手、スタッフ、コーチ……。チームにかかわるすべての人が、私は大好きです」と語ったキャプテンのギョズデ・クルダル(右) 【写真は国際バレーボール連盟より】

 謙虚にして、自信家。そして、情熱とユーモアに満ち溢れている。それが、ジョバンニ・グイデッティだ。予選グループ最終戦後の記者会見では、まず一言目に今大会のホストを務めた対戦相手、久光製薬への感謝の気持ちを表した。

「大会を通しておもてなしをしていただき、共に練習する中で親切に対応していただいたことに感謝を申し上げます。ご存知のとおり、久光製薬にはもっとも強力なスパイカーがおらず、いつもの状態ではないことは承知の上です。それでも私たちはとてもいいプレーができました。ワクフバンクにとっては、14人の素晴らしいプレーヤーがいることをお見せできたと思います」

 長岡望悠や新鍋理沙をけがで欠く久光製薬を相手に、ワクフバンクは国際大会という貴重な舞台を経験させるべく、主力を温存し、経験の浅い選手を起用したのであった。

 イスタンブール・ダービー直後の会見では、「両チーム共に素晴らしい試合ができ、友人であるマッシモ・バルボリーニ監督にも感謝したいです」とコメント。両監督への質問がされた際には、“友人”からマイクを奪い取り、「僕が先だよ」と言わんばかりのイタズラっぽい笑顔をバルボリーニ監督へ送った。

 そんなおちゃめな一面をのぞかせながら、いざバレーボールや自分たちのチームのことになると、その口調は熱気を帯びる。「今年からトルコ代表監督に就任し、指揮するうえでのクラブチームとの違いは?」と尋ねると、グイデッティ監督は「その話になると、1日かけても語り尽くせません」と微笑んだ。それはあながち、冗談ではないだろう。

次なる野望を抱いて

 決勝はレクソナとの再戦になった。高さで上回るワクフバンクはシュ・テイが、相手ブロックをものともせずに得点を重ねる。第2セットでは中盤までレクソナがリードしていたが、レゼンデ監督が振り返るに「常に相手の方がチャンスを得ている」状態だった。個人の能力の高さ、攻守の戦術面においてワクフバンクが圧倒し、終わってみれば3−0のストレートで大会を締めくくった。表彰式ではトルコ国歌が響き渡った。

「このチームの素晴らしさと、そのことに対する満足感で胸がいっぱいになりました」

 もっとも高く掲げられたトルコ国旗を目にしながら、グイデッティ監督は喜びをかみ締めていた。だが、レクソナとの決勝戦後の記者会見では、いつもと変わらぬ姿がそこにはあった。

「レゼンデ氏はすでに世界最高の監督ですから、私からの祝辞は必要ないでしょう。祝いの言葉はレクソナのチームだけにしておきます」

 相手へのリスペクトを損なわず、一方で、時間の都合で先に会見場から去ることになったレゼンデ監督を見送りながら、「神戸ビーフを食べに行かないといけないからね」とおどけてみせる。そして、会見の最後には、来る次の挑戦への意欲を口にした。

「今月の18日からナショナルチームでの活動が始まります。すでに名前の知っている選手も、今大会では素晴らしいプレーをしました。ですが、まだまだやるべきことはたくさんあります」

 ほんの数時間前に世界一のタイトルを獲得したばかり。にもかかわらず、グイデッティ監督の目には野心の炎がゆらめいていた。

(坂口功将/月刊バレーボール)

月刊バレーボール2017年6月号(PR)

2017年全日本男女の始動に先駆けて、今年度に登録された注目選手のインタビューを収録。全日本男子のエース・石川祐希選手や、5月上旬に開催された黒鷲旗のレポートを掲載。連載企画のチーム特集の今月はJTサンダーズ。2017年に現役を引退した木村沙織選手のメモリアルブック『ありがとう。』も発売中

2/2ページ

著者プロフィール

1947年創刊。バレーボールの専門誌として、その黎明期から今日まで、日本のバレーボールを取り上げ、その報道内容は、全日本、Vリーグはもちろん、小・中・高・大学生、ママさんまで、多岐に渡る。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント