配置転換に向き合ったDeNA救援陣 山崎康晃と須田幸太の1カ月

日比野恭三

ルーキーイヤーから2年連続30セーブ以上をあげていた山崎はクローザーの座をパットンに譲った 【(C)YDB】

 GW最後の日曜日となった5月7日、横浜DeNAは東京ヤクルトに敗れ、今季初の貯金生活入りとはならなかった。

 それでも、14勝15敗2分のセ・リーグ4位というポジションは、同じく31試合を消化した段階で9勝20敗2分(借金11)だった昨季に比べれば、上々の滑り出しと言っていいだろう。しかもチームの柱である筒香嘉智の打撃成績が伸び悩んでいたなか、借金1で踏みとどまったのだ。これは、チームに地力がついてきたことを物語っている。

 開幕からの1カ月余りを振り返ると、最大のトピックはやはり「ブルペン陣の配置転換」ではないだろうか。

クローザーに「戻りたいですね」

 入団から2年連続30セーブ以上の“小さな大魔神”山崎康晃が7回に登場し、横浜スタジアムの観客がどよめいたのは4月16日のヤクルト戦。就任2年目のアレックス・ラミレス監督は試合後、新外国人のパットンをクローザーとする決断に至ったことを報道陣に明かした。

 もちろん、伏線はあった。

 山崎は、4月13日の阪神戦、同点の9回に登板して3失点(自責は1)。さらに翌14日のヤクルト戦では1点リードの9回に同点に追いつかれ、2度、クローザーとしての務めを果たせなかった。「シーズン80勝以上」を目標に置く指揮官は、勝つために、非情な判断を下した。

 新たに「7回」が仕事場になった山崎に率直に聞いた。クローザーに戻りたいか、と。

 24歳は、二度三度とうなずき、言った。

「戻りたいですね。やっぱりぼくの定位置だと思ってるし、いまの時点では、ユニホームを脱ぐまで自分の定位置だと思ってます。でも、良いピッチャーがぼく以外にいるっていうのも確かですし……。いまの時期って、本当に成長させられてると思うんです。もっともっと強くなって、何とか戻りたい気持ちはありますよ」

 DeNAは、ホームゲームに勝利した試合後、球場外のステージに選手を呼んでファンと喜びを分かち合う“アンコールヒーローズ”という催しを行っている。4月28日、7回のマウンドに上がり、広島の上位打線を3者三振に抑えた山崎がその壇上に立った。

「戻ってこいよ!」「待ってるぞ!」

 ファンのかけ声に、笑顔が売りの男の涙腺がゆるんだ。山崎が振り返る。

「ぼく自身は、プロ野球で活躍するようなピッチャーではないと思ってるんです。康晃ジャンプもそうですけど、あんなのなかったらぼくは普通のピッチャーだと思ってる。(ドラフト1位指名で競合した)阪神に行っていたら、まだ(2軍の)鳴尾浜で投げていたかもしれない。だから、1年目から後押ししてくれたファンの人たちにぼくは感謝していますし、(アンコールヒーローズで耳にした)あの言葉というのは、じわっとくるものがありました。ああいうふうに言ってもらえるんなら、やっぱりぼくも戻る義務がある。今年中になろうと、来年になろうと、良いピッチングを続けていれば絶対にあの場所に戻れると思うので……」

 山崎は、新たにクローザーに指名されたパットンにエールを贈ることも忘れなかった。

「9回って、本当にきつい状況で投げてるんです。それはやったことのある人だけが言えることだと思う。パットンはパットンでいま一生懸命戦ってると思うし、ぼくは素直に応援しています。チームメイトとして、やっぱり抑えてほしいですから。ただ、冷静に見たらうらやましさもある。戻りたい気持ちも心のどこかにあるって感じです」

 分裂する2つの思いを言葉に込めた後、「すみません、うまくまとめてください」と山崎はいつもの笑顔で謝った。

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著者プロフィール

1981年、宮崎県生まれ。2010年より『Number』編集部の所属となり、同誌の編集および執筆に従事。6年間の在籍を経て2016年、フリーに。野球やボクシングを中心とした各種競技、またスポーツビジネスを中心的なフィールドとして活動中。

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