WBC初優勝の勢いはシーズンでも!? アメリカ代表選手の今をリポート

杉浦大介

アメリカのWBC初制覇に大きく貢献したストローマン。周囲は過剰反応をするなか、故障の噂を即座に否定した 【Getty Images】

「通常通りの腕の張りだよ。今日はほぐすのが難しかっただけで、心配はしていない。いつも通りに調整して、来週火曜日には準備はできるさ」

 5月3日(現地時間)のヤンキース戦で3回5失点と打ち込まれた後のこと。一部でささやかれた右腕に故障発生の噂を、ブルージェイズのマーカス・ストローマンはクラブハウスで即座に打ち消した。関係者の話を聞く限り、実際に大きな心配はなさそう。例え来週の先発機会を飛ばす事態になったとしても、復帰までに長引くような状況ではないようだ。

 このように周囲が過剰反応する一因として、今年が4年に一度のワールド・ベースボール・クラシック(以下、WBC)の開催年であることが関係しているに違いない。

 3月に開催されたWBCで、ストローマンは3試合で15回1/3を投げて、防御率2.35と好投した。決勝戦でもプエルトリコ打線を6回までノーヒットに抑え、大会MVP、最優秀投手賞を受賞。早い時期からそれほど活躍した後だけに、多少の異常が発生しても周囲は色めき立ってしまうのだ。

 今季ここまでのストローマンの投球内容を見る限り、WBCの疲れは感じられない。最初の5度の先発機会で防御率2.97、すでに2度の完投もマークした。4月は8勝17敗と苦しんだブルージェイズの中では数少ない好材料になり、WBCで大活躍した勢いをそのまま持ち込んでいるようにすら見えたほどだった。

WBCの緊張感が先発陣には好影響?

 ストローマン以外のWBCアメリカ代表の先発投手を見渡しても、悪影響は見られない。準決勝の日本戦に先発したタナー・ロアーク(ナショナルズ)も4月は5試合で3勝0敗。内容も防御率3.64、WHIP1.18、21奪三振と優れており、好スタートを切ったと言っていいだろう。

「僕たちの仕事はイニングをなるべく早く終えて、野手を早くダッグアウトにかえしてあげること。とにかく出来る限り短い時間で長いイニングを投げるのが目標。先発投手とはそういうものなんだ」

 4月21日、ニューヨークでのメッツ戦で7回途中まで3点に抑えて勝利に貢献した後、ロアークは自信を感じさせる言葉を残していた。

 アメリカにとってのオープニング・ゲーム、3月11日のコロンビア戦に先発したクリス・アーチャー(レイズ)は、4月を2勝1敗、防御率3.43で切り抜けた。2度の先発を経験したロイヤルズのダニー・ダフィーも、今季最初の4度の先発機会ではすべて2失点以下、防御率1.32だった。こうして見ていくと、3月から早めに仕上げ、緊張感のある舞台を経験したことはアメリカの先発たちにプラスに働いたのではないかとすら思えてくる。

調子を落とし気味だが傾向はまだ見えず

 もっとも、例外もある。

 2次ラウンドのベネズエラ戦で先発登板したドルー・スマイリー(マリナーズ)は、3月31日に肘の痛みで故障者リスト入り。回復も思わしくないようで、今季の登板はまだかなっていない。

 また、最新の登板で打ち込まれたのはストローマンだけでなく、アーチャーは4月24日に7回途中5失点で初黒星を喫し、ロアークは5月2日のダイアモンドバックス戦で4失点、2被本塁打。ダフィーも4月25日、5月2日と2戦連続で6失点と大誤算だった。WBCから1カ月以上が過ぎた4月後半から、そろって調子、数字を落としているのは気になるところではある。

 結局のところ、WBCに出場した先発投手たちの状況を分析するのは早すぎたのだろう。まだサンプルが少な過ぎる。例年より早くから準備し、複数回にわたって先発した影響は出てくるのか。これからシーズンが進む中で、傾向のようなものが徐々に見えてくることはあり得るかもしれない。

アメリカ先発陣のシーズン成績

アーチャー:6試合 39回1/3 防御率3.43
ストローマン:6試合 39回1/3 防御率3.89 
ダフィー:6試合 37回 防御率3.89
ロアーク:6試合 35回2/3 防御率4.04
スマイリー:登板なし
※現地5月3日時点

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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