まさかのソウルスターリング敗因は馬場か 単勝40倍レーヌミノルが波乱桜ヒロインに

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直線は我慢、我慢の追い出し

 ソウルスターリングが馬場に絡め取られる中、勝ったレーヌミノルと池添は完ぺきな競馬を展開してみせた。

直線早め先頭から後続の追撃を完封 【スポーツナビ】

「スタートがすごく良かったですし、他の馬のことは考えないでまずはレーヌミノルのリズムだけを考えよう」と池添。このレースがテン乗りとなるわけだが、初コンタクトとなった1週前追い切りで状態の良さと能力の高さを掴み取り、レース前の返し馬から伝わる抜群の感触から、絶好の仕上がりであることを再確認。加えて、馬場もこなせそうな走りから「自信を持って」乗ったという。

 この“自信”という点に関しては、騎手時代の01年にテイエムオーシャンで桜花賞を勝った本田調教師が、現役時代と変わらぬ熱い思いを誰よりも胸のうちに秘めていた。

「正直な話、新馬のときからこの桜花賞を目標にしていたんです。阪神ジュベナイルフィリーズ(3着)は外の馬を弾きながらの競馬だったので、そこで体力を消費してしまいましたが、1、2着馬はすんなりとしたレースだった。ウチの馬も何事もなく回って来れれば、なんとかなるんじゃないのかな、と」

 欲目もありますけど、と若干の照れ笑いも浮かべた本田調教師だが、それでもソウルスターリングに白旗を揚げたことは一度もなかったという。そんなトレーナーの思いを受けて手綱を握った池添もまた、100点満点の騎乗で回答。これまでのレーヌミノルの敗戦パターン――早め先頭で後続に差されてしまう競馬をジョッキー自身も十分理解しており、最後の直線は我慢に我慢を重ねていた。

我慢に我慢を重ねての追い出し――池添は完ぺき騎乗で勝利に導いた 【スポーツナビ】

「直線に向いてからも少し待って、とにかく我慢だ、我慢だと馬にも自分にも言い聞かせていました。1頭になっても気を抜かせないようにステッキを打ったり、見せムチをするなどして工夫して乗ったつもりです」

 後続から迫る蹄音に「去年といっしょは嫌だ」と、シンハライトで2センチ差で敗れた悪夢もよぎったという池添。レーヌミノルはそんな新相棒の“トラウマ”をすべて振り払うかのように、先頭を譲ることなくゴールした。この日、仁川に吹き荒れた強風のような、波乱の桜ヒロインに上り詰めたのだった。

“本物”証明の次走、NHKマイルCが有力か

 配当を見てみると、単勝は40倍ながら3連単は9万円台。波乱とは言え、大波乱と言うには安すぎるし、レーヌミノルの戦績を振り返ってみると、穴馬と呼べないくらいの実績を持っている。小倉の2歳チャンピオンであり、牡馬相手の京王杯2歳Sでも2着。そして、暮れの阪神JFでも3着に好走しており、この桜花賞はその阪神JFの上位3着馬の着順を入れ替えただけなのだ。今年の3歳牝馬は総じてレベルが高く、この馬もあの馬も……と目移りしてしまったがために、レーヌミノルはすっぽりと人気の盲点に入ってしまったのだろう。終わってからなら何とでも言えるのだけど、こうして冷静に分析してみると、本田調教師が強調したようにもともとレーヌミノルにも桜の女王となれる資質は十分に備わっていた。そこを見逃さなかった馬券上手がこの世にはたくさんいたがために、単勝40倍の馬が勝ったのに3連単が9万円台という、予想外に“安い”配当となった、というわけだ。

距離適正を考慮すると次走はNHKマイルCが有力か 【スポーツナビ】

 そうは言っても、まだレーヌミノルを伏兵としか見れない向きも当然あるだろう。次走は桜の女王の力が“本物”であることを証明する一戦にもなる。注目の次戦について、本田調教師は明言せず、オークスに関しては「ジョッキーが大丈夫と言うのであれば」と語るにとどめている。その言葉を託された池添も慎重な口ぶりながらも「本当にいい馬ですし、マイルだったら男馬相手でも十分やれます。どっちかと言われたらマイルと言うかも」と、NHKマイルカップの方に色気を持っているようだ。

 となると、ソウルスターリングも距離延長に不安を抱えており、両者の再戦は二冠目・オークスではなく、府中マイル戦に舞台を移す可能性もある。いずれにせよ、この2頭の選択が3歳牝馬戦線とマイル戦線の流れをガラリと変えることは言うまでもない。そして、桜花賞には目もくれず牡馬相手の皐月賞に臨むファンディーナが次週に控えている、ということも考えると、やはり今年の3歳戦線の行方は牝馬が鍵を握っていると言えそうだ。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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