2試合連続完封も不安の残るディフェンス 改善すべきリスタート対応と守備陣の固定

元川悦子

守備に手応えを感じていたハリルホジッチ監督

UAEとタイに無失点で連勝を飾った日本。しかし、守備の出来は不安の募るものだった 【写真:FAR EAST PRESS/アフロ】

 日本代表はワールドカップ(W杯)アジア最終予選突入後、9月6日の第2節タイ戦(2−0)を除く前半戦4試合で失点を重ねてきた。9月1日のUAE戦(1−2)は直接FKとPK、10月6日のイラク戦(2−1)はFKからのヘディングシュート、アウェーのオーストラリア戦(1−1)もPKと、ここまでの失点は全てリスタート絡みだった。

 11月15日のサウジアラビア戦は終盤のパワープレーで押し込まれ、初めて流れの中から1点を失ったが、UAE戦、タイ戦に臨むメンバー発表会見の中で、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「今まで(2次予選を含めた)予選13試合で失点5。(そのうち)4つがセットプレー。そして流れの中から1失点。それ(流れからの失点)はサウジの試合の終盤だ。つまり守備は良い仕事ができている」と強調。予選全試合フル出場の吉田麻也が統率する守備陣に手応えを感じている様子だった。

 その流れを持続し、後半戦の山場となる23日(現地時間)のUAE戦、28日のタイ戦で相手を完封できるか否か――。そこが6大会連続の世界切符を獲得するための必須テーマになると見られた。

 2連戦の1試合目となるUAE戦の最重要ポイントはもちろん、司令塔のオマル・アブドゥルラフマン(21番)を封じることだ。それはチーム全体が強く認識しており、「相手の特徴はキーマン(オマル)からの裏へのボールだと思うので警戒しないといけない。アウェーの雰囲気に飲まれないことやジャッジも警戒してやらなければいけない。繊細な対応が求められる。それは僕もみんなも理解していると思います」と長谷部誠に代わってキャプテンマークを巻いた吉田は、決戦前夜に語気を強めていた。

オマルを徹底マーク、功を奏したUAE戦の守備

UAE戦では長友(左)らがキーマンのオマルを徹底的にマークした 【Getty Images】

 指揮官が採った秘策は中盤を逆三角形に並べる4−3−3の採用だった。山口蛍をアンカー、香川真司を右インサイドハーフ、今野泰幸を左インサイドハーフに配置。今野と左FWの原口元気、左サイドバックの長友佑都、左DFの森重真人が中心となってオマルを徹底的にマークした。

「オマルの管理は相当口酸っぱく言われていたし、ミーティングもたくさんしました。技術が高いので不安でしたが、何とか守れたかなと。向こうもフリーになろうといろいろ動いてたけれど、動いたところに必ず誰かが行くから、どんどん下がっていった。(オマルへの対応は)良かったと思います」と今野は前半途中からしつこい守備を嫌がって右から左へと移動した相手エースに対して、してやったりの表情を浮かべたが、まさにそこが試合の肝だったのは確か。最前線のアリ・マブフート(7番)とイスマイル・マタル(10番)に決定的なパスが供給される回数も減り、日本としては功を奏した形になった。

 とはいえ、ピンチが皆無だったわけではない。その筆頭が前半20分にマブフートが川島永嗣と1対1になった場面だ。この時はハーフウェーライン手前でボランチのアハメド・バルマン(11番)がボールを持った際、今野と香川のチェックが遅れ、右から中に入ったイスマイル・アルハンマディ(15番)への森重と山口のプレスも中途半端になった。結果的に森重がかわされたことで、ドリブルで持ち込まれ、ペナルティーエリア内でフリーになっていたマブフートにスルーパスが通ったが、その前段階から日本守備陣は後手を踏んでいたのだ。

「僕はあまり(アンカーを)やったことがないので、ちょっと戸惑いはありました。相手のポジションだったり、自分のポジションをすごく気にしてプレーしていたので、すっきりできた感じはないです」と山口が不完全燃焼を吐露した通り、ナーバスになった彼が引き過ぎて最終ライン寄りになる分、攻撃陣との間に距離ができ、スペースが空くケースが何度も見受けられた。急造布陣で完璧な連係を求めるのは難しいが、ハリルホジッチ監督は実戦の中で戦術バリエーションを広げようと考えるタイプ。であれば、選手たちは準備期間が足りなくてもやるしかないのだ。そのことは今一度、認識すべきだろう。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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