リーグ屈指の攻撃力を誇るサンウルブズ 今季初勝利のために必要なことは?

斉藤健仁

経験の少ないメンバーで南アフリカ勢と対戦

デビューからいきなりの活躍で世界にインパクトを与えているサンウルブズWTB/FB江見翔太 【写真:ロイター/アフロ】

 歯がゆい状況が続いている。日本を本拠地とするサンウルブズは、スーパーラグビー参入2年目を迎え、ほぼ3分の1の日程を終えた。

 2月25日の開幕戦はホームで、昨年の王者ハリケーンズ(ニュージーランド)相手に17対83で大敗し、相手の強力なアタックの前に準備不足を露呈した。3月に入り、南アフリカ勢と対戦する4週間のツアーに出かけ、結果的に4戦4敗で5連敗となったが、想像以上の出来映えを見せたと言えよう。

 サンウルブズのメンバーは現在56人。1人を除いて、日本代表資格を持っているか将来的に日本代表になる可能性のある選手だ。つまり、2019年のワールドカップに向けてサンウルブズ=日本代表という構図ができあがり、自国開催に向けて、日本代表の強化を考えると理想的な形となった。

 ただ、コンディションを配慮したこともあり、今回の遠征メンバーは、昨年、サンウルブズで戦った選手は10人に満たず、半数以上がスーパーラグビー初経験で、日本代表経験者も昨年11月の欧州遠征のメンバーが中心。2015年ワールドカップメンバーはわずか4人で、しかも先駆者であるHO堀江翔太、SH田中史朗は2試合目を終えると休養に入ったため、3〜5試合目はPR三上正貴、WTB福岡堅樹の2人しかいないという状況だった。

ティアティアHC「期待値をはるかに超えてくれた」

LOモリは攻守に渡って活躍を続けている 【写真:ロイター/アフロ】

 ホームのシンガポールで行われた2試合目は、昨年17位のキングズとの対戦だったが、勝利できなければ、その後の3試合はもしかしたら大敗してしまうのでは、と危惧していた。だが、勝たなければいけないキングズには23対37と苦杯をなめた。ただ、その後は「チームとして遠征に出かけた方がまとまる」と田邉淳コーチが言っていたが、その通りとなる。

 3試合目のチーターズ戦は昨年、アウェーで17対92と大敗した1400mの高地・南アフリカのブルームフォンテーンでの対戦だったが、見違える試合運びを見せて31対38と善戦。続くアウェーのブルズ戦も21対34と敗戦したが接戦を演じ、再びシンガポールに戻ってきてカンファレンス首位のストーマーズと対戦し、前半はリードして折り返すものの、後半に地力の違いを見せられて31対44で敗れた。

 白星こそ奪うことはできなかったが、「今回のツアーメンバーは期待値をはるかに超えてくれました。大人数のスコッドでいいポジション争いができている」とフィロ・ティアティアHC(ヘッドコーチ)が称えるように、なぜ、若いメンバー中心でも対等に戦えたのか。

 それはひとえに「サンウルブズのDNAはアタック。体が大きくないので、できるだけディフェンスの時間を減らしていきたい」と田邉コーチが言うとおり、攻撃が十分に機能していたからだ。

ボールを持って走った距離はリーグ2位

トライ数で5位タイにつけるWTB福岡 【写真:ロイター/アフロ】

 データを見てもそれは十分に証明されている。トライ数16&ラインブレイクした数55回は全体7位、さらにボールを持って走った距離は2592m、ラック成功率は96%、そしてタックルを受けながらパスをするオフロードパスは77回と、すべて18チーム中2位の数字である。

 チームで攻撃することができているため、個人スタッツも自然と上位にサンウルブズの選手がランクインしてくる。福岡は4トライを挙げてトライランキング5位タイにつけており、WTB/FB江見翔太はオフロードパスが11回でトップタイ、ゲインしたメートルは全体2位と好成績を収めている。バックスリーがオフロードパスでチャンスをつくることは、ジェイミー・ジョセフHCが指揮する日本代表とも共通している。

 この遠征でブレイクした江見は「初戦で途中から出てランは通用すると思った。そこは自信を持って南アフリカ勢にもできました。フィジカルは強く、正面から当たると太刀打ちできないが、(マークを)ずらしたり、タイミングをずらせばブレイクできたり、ゲインできました」と振り返った。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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