清宮が“オーラ”で初戦突破に貢献 相手失策を誘い、ひと振りでびびらせる

楊順行

凡退でも敵将を感嘆させる打球の質

この日の清宮は4打数1安打。和泉監督は「次から良さが出るのでは」と2回戦以降に期待を寄せる 【写真は共同】

 1回戦屈指の好カードだった。

 早実の和泉監督は「接戦に持ち込まなければ勝機はない。明徳義塾と対戦することでチームが成長するだろうし、私たちを強くしてもらえると思う」。明徳の馬淵監督は、「素晴らしいものを持っている。スタンドへの持っていき方が強烈だし、低めの捉え方がとくにうまい」と、相手の主砲・清宮を警戒した。

 なにしろ1年夏に甲子園で記録した2ホーマーをはじめ、高校通算79ホーマーである。甲子園練習では、浜風を引き裂いて右中間にアーチを架けており、「思ったよりも伸びました」。ウエイトや体幹トレーニングによるパワーアップには、本人がびっくりするほどだ。

 ただ、1992年夏、松井秀喜を5敬遠して星稜(石川)に勝利したことを引き合いに、報道陣から清宮敬遠の可能性を問われると、馬淵監督は「そんなことは、ない。松井に怒られる(笑)。ただ北本には、『3、4番には絶対打たれる。ホームランでも気にするな、打率10割はないんじゃけ』と伝えたよ」。

 事実、8回までの北本は、7安打2失点。清宮に1安打、野村には2安打されたが、打点は許していない。ただ、「清宮の3回のセンターフライは、すごかったね。(スラッガー特有の)あんなに高く上がる打球は、久しぶりに見たわ」と、凡退でも敵将を感嘆させていた。

 そして9回には、同点を呼ぶつなぎの四球。清宮は言う。

「自分は4・1(よん・いち=4打数1安打)ですよね? 自分が打てなくてもみんながカバーしてくれて、持ち味を発揮した試合だと思います。自分たちは正直、点を取られないチームじゃないし、3点先制されてもまったく動じることはありませんでした。人生最初で最後のセンバツなので、楽しんでやりたいですね」

 和泉監督の言葉で締めくくる。

「3点先行されたことで、今日の清宮は、自分のバッティングよりもつなぐことを優先したようですね。おっつけたような振りが見られましたから。だから9回には『引っ張れよ』と声をかけました。そしてファウルのスイングが相手にプレッシャーとなり、四球でしょう。清宮はいつも、公式戦初戦はあまり良くないのです。次から良さが出るのでは」

 東海大福岡(福岡)との次戦、清宮フィーバーの再来を楽しみにしているのは、この人も同じらしい。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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