“攻め”の姿勢を取り入れ自己ベスト 棒高跳・江島雅紀のフィンランド武者修行

構成:スポーツナビ

「グロチャレ」でフィンランドへの武者修行を行った棒高跳の江島雅紀(左から2番目) 【写真提供:江島雅紀】

 若手アスリートの海外挑戦を支援する安藤スポーツ・食文化振興財団と日本陸上競技連盟が実施する「安藤財団グローバルチャレンジプロジェクト(グロチャレ)」。将来、国際大会でのメダル獲得を志す陸上競技の若手アスリートを支援するため、2015年より始まったこのプロジェクトも2シーズン目となった。

 2016年冬、2017年春には、短期支援選手として8名が各国に渡航。スポーツナビでは、海外での武者修行を終えた選手たちの声を紹介する。今回は、昨年に棒高跳の日本高校記録(5メートル46)を樹立した江島雅紀(荏田高、4月から日本大)にフィンランドでの活動について語ってもらった。

普段と違うトレーニングが刺激に

■江島雅紀(荏田高→日本大)
・派遣先:フィンランド(ヘルシンキ)
・期間:12月10日〜18日、1月9日〜24日(25日間)


(今回フィンランドへ決めたのは)多くのオリンピック選手を輩出している国で、有名なコーチがいることも知っていたので、もともと行ってみたい国でした。実際に現地に行ってみると、屋内トレーニングが中心になるとは思っていたのですが、すべてが予想を超えるスケールの大きさで、充実した練習をすることができました。現地では世界的にも有名なプロコーチのスティーブ・リッポンコーチに指導してもらいました。また合宿にも参加させていただき、同年代の選手たちと一緒に練習をすることで、多くの刺激を受けました。

フィンランドの施設はスケールが想像以上だった。室内でも棒高跳の練習ができる環境が整っていた 【写真提供:江島雅紀】

(海外での生活は)もともと大会出場などで海外に行くことはありましたが、生活するというのはまったく別物でした。コミュニケーションは英語でしたが、やはり自分の意見をちゃんと言わないといけないので、積極的に話しかけるようにしました。生活で困った部分は、日本のように近くにコンビニエンスストアがないから、水の確保とかは注意しないといけなかったです。やはり、日本の環境が当たり前だと思わないようにしないとと思いました。

 トレーニングについては、僕の予想では走りのメニューが中心かと思っていましたが、屋内でも跳躍だったり、日本ではそれほどやらない体操のメニューが週1回あったり、あとはウェイトトレーニングが中心でした。

 棒高跳は空中動作の中で、逆立ちの状態になったり体操技術に近い動きが必要です。その技術を養うために、つり輪を使ったり、棒を使って練習をするのですが、それが日本だと屋外施設ではできないのですが、今回は競技場の近くにそれができる環境があったので、メニューに取り入れました。

 ウェイトトレーニングに関しても、海外の選手はゴムチューブを使って筋肉の細かい部位ごとにトレーニングしていて、ウェイトトレーニングと同じ効果を得ていました。そこは、僕が一番収穫を得られた部分です。

現地での大会に参加し、U20日本タイ記録で優勝した 【写真提供:江島雅紀】

 また自分自身の課題として、踏切の際に足が理想よりも少し後ろの位置で踏み切っていたので、ポールにすべての力を伝えることができていないということがありました。この点についてはリッポンコーチに指導してもらい、短助走(6〜8歩)を中心にして、自分の体の真下で踏み切る練習を何度も繰り返し、課題克服をするように努めました。そのおかげで現地で参加した大会で、U20日本タイ記録とU20室内日本記録となる5メートル50の自己ベストを跳ぶことができ、優勝することができました。

東京五輪に向け1日1日が大事に

海外の選手から“攻め”の姿勢を学び、これからの活動に生かす 【写真提供:江島雅紀】

(プログラムを終えて)海外の選手はやはり攻めの姿勢が強いです。棒高跳でいうと、グリップを高く持って、足が速ければ速いほど高く飛べるので、僕もそういうところを目指して、意識的に高いグリップを持とうと思うようになりました。

 日本に戻ってからは握りの高さも上がり、それは自分的にも攻めのメンタルが出てきたと思います。普通は試合だと、コンパクトにまとめて跳ぼうとしてしまうのですが、僕の場合は190センチの身長を生かして、体を大きく使ってダイナミックな跳躍をすることで記録が生まれるので、その自分らしさを押し通してやっていきたいと思っています。

(今回のフィンランド渡航について)このような経験ができるのは歴代の先輩たちが築き上げたもの。僕も今回のように海外に出て分かることもありますし、大会とは違った場で、それこそ競技の友人も作ることができましたし、現地の環境に慣れることもできました。こういう経験は実際に現地に行かないと分からないし、経験なしでいきなり世界大会に出場しても勝てないのだろうと感じました。今後も自分から積極的にいろいろなことに取り組み、記録を伸ばしていきたいと思います。

 今年は8月の世界選手権(イギリス・ロンドン)を目標にしているので、シニアでの戦いも意識しながら、いずれは日本記録の更新も視野に入れて頑張っていきたいです。

(2020年東京五輪は)出場するだけでなく、ひとつでも上の目標をクリアできるように目指したいです。そのためには1日1日が大事なので、しっかり今から練習していきます。

2020年東京五輪では1つでも上の成績を残せるように、今から1日1日を大事にしていく 【写真は共同】

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