桐生祥秀「速い選手と練習したかった」
手記で明かした米国遠征に懸ける思い

 東京五輪に向けた選手育成を考える時、必ずと言っていいほど“海外経験”が話題になる。「世界の大舞台でも力を発揮できるよう、若いうちから海外で武者修行を積ませたい」と語る強化担当者は多い。


 若手の海外派遣に乗り出した競技団体の1つが日本陸上競技連盟だ。2015年度に安藤スポーツ・食文化振興財団とともに「安藤財団グローバルチャレンジプロジェクト(グロチャレ)」を実施。2020年に活躍が期待される若手選手の海外活動を支援している。スポーツナビでは、参加選手に手記を依頼。派遣直後と終了時での心境の変化をお伝えする。今回は、100メートルで日本歴代2位となる10秒01の自己ベスト持つ、男子短距離界のエース・桐生祥秀(東洋大)の生の声を紹介する。

痛感した0.01秒の重み

練習に合流したばかりの桐生(中央)だが、ブロメル(左)ら現地の選手とすっかり打ち解けた様子
練習に合流したばかりの桐生(中央)だが、ブロメル(左)ら現地の選手とすっかり打ち解けた様子【写真提供:桐生祥秀】

■桐生祥秀(東洋大)

・派遣先:米国・テキサス州ウェーコ

・期間:3月14日〜4月4日


 海外で速い選手と練習したいと前々から思っていたので、よい機会だと思い安藤財団グローバルチャレンジプロジェクトに応募しました。日本では100メートルを9秒台で走る選手はいませんが、米国に行けばそのような選手や、そんな選手を指導するコーチに見てもらいながら練習をすることができるので、米国でトレーニングをしたいと思いました。


 本格的な練習の前に、18日に行われた世界室内選手権60メートルに出場しました。結果は6秒56で組3着、全体9位。あと0.01秒で決勝にいけたので、100メートルにとっての0.01秒の重要さをあらためて身にしみて感じました。ただ、走りの感覚は初戦にしては良かったです。自信になりました。


 練習はトレイボン・ブロメル選手(編注:15年北京世界選手権の銅メダリストで、桐生選手と同じ20歳。100メートルの自己ベスト9秒84)らとともに、ベイラー大で行っています。ベイラー大は広大なキャンパスにきれいな建物が並んでいて、トレーニングの施設も大きくてきれいです。とても快適な練習ができますし、何より選手たちの走りの速さが違います。


 現地での1日の流れは、朝は8時に起床して朝食を食べた後、昼まではのんびりしています。少し早めに昼食を食べて、13時くらいから練習をします。ホテルに帰って、夕飯は外のレストランを探して食べています。ホテルに再び戻ったら、トレーナーさんにケアをしてもらい、23時には就寝です。

小さな街ゆえの苦労も

ブロメルを指導するマイケル・フォード氏(写真手前)とスタートの動作を確認
ブロメルを指導するマイケル・フォード氏(写真手前)とスタートの動作を確認【写真提供:桐生祥秀】

 現地ではスタート練習に重点を置くつもりです。スタート練習は日本でもしてきていて、世界室内でも試しました。おおよそ完成形に近づいていますが、テキサスの暖かい気候の中で、速い選手とともにトレーニングしながら、こちらでも試したいです。また、現地のコーチと師事する土江(寛裕)コーチと相談をしながら、もっとブラッシュアップしていきたいです。どのくらい速く走れるかを、肌で感じて確かめたいと思います。


 練習以外の面では、言葉(英語)はなかなか難しいですが、現地の人たちが易しい単語などで対応してくれるため、理解はできます。また、ベイラー大があるウェーコはあまり大きな街ではないので、レストランなどの食事の選択肢が少なく、栄養や体重のコントロールが難しいです。


 実際にじっくり練習できる期間が短いので、練習で手応えを得るのはなかなか難しいですが、滞在期間の最後にテキサスリレー(現地時間30日〜4月2日)という大きな試合があり、そこで100メートルのレースに出場するので、その時に今の自分がどれくらい走れるかの手応えを感じたいです。


 漠然としていますが、とにかく速くなるための手応えやヒントをつかんで帰りたいと思います!


※後編は4月上旬に掲載予定です。

プロフィール

桐生祥秀(きりゅう よしひで)

1995年12月15日生まれ。洛南高2年時に次々と世代記録を塗り替え、3年時の4月には100メートルで日本歴代2位となる10秒01をマークする。同年夏には世界選手権に初出場を果たす。翌年、東洋大に進学し、同年夏の世界ジュニアで銅メダルを獲得。日本短距離界をけん引する1人として注目を集めている。

構成:スポーツナビ

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