「後悔しない人生なんてクソくらえ」 川崎宗則、プロ18年目の全開キャンプ

丹羽政善

メジャー6年目、プロ18年目のキャンプも全開で臨む川崎 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

「コージ、ガンバレー!」

 5日(現地時間)、カブスの上原浩治がオープン戦で初登板をしたとき、ショートを守っていた川崎宗則は、何度も声を飛ばした。

「コージ! コージ!」

 今年6月に36歳になる川崎と4月に42歳になる上原。6つも年齢差があるが、川崎の知るところではない。

「呼び捨てだったんですけど、でも野球場なんでね、戦場なんで。そのへんはやっぱり、年功序列とか野球界の体育会系のこととか関係ない」

 さらに川崎は自らの野球哲学を語る。

「裏で会ったら、『上原さん』ってちゃんと言って、野球場で会えば、『コージ』です。そこはもう頑として変わらず、僕のスタイルでいこうと思います」

 それに対して上原は、「うるさい」とぴしゃり。しかし、こう続けたのだった。

「すごく楽にはなりますよ」

 川崎が、上原の背中を押していた。

「焦りすぎて焦っていない」とは?

 早いものでもう、川崎にとっては米国に渡って6年目の春となる。メジャーキャンプには招待選手として参加。相変わらず身分を保障されず、カブスの内野の陣容を考えると厳しい立場だが、開幕メジャーという高いハードルを真っすぐに見据え、ユニホームを泥だけにしながらボールを追う。

「アピールしないといけない」

 5日の試合後、そう口にした川崎だが、舌の根の乾かぬうちに「いや、アピールはしません」と前言を撤回した。

 どういうことなのか?

「もうチャンスはありませんから。(プロ)18年目はピンチばかりです。若いときはチャンスをいっぱいもらいましたんで、今はチャンスがないんで、ピンチばかりなんで、もう何も焦ってないし、焦ってないというか、焦りすぎて焦ってもないし、チャンスは僕にないんで、ピンチばかりなんで、そういう感じでいきたいと思う」

「焦りすぎて焦っていない」とは、どこか突き抜けた感があるが、彼の場合、そうやって追い込まれながらも、自分を見失うことはない。

 例えば、彼が口にするように今の置かれた状況が“ピンチ”なら、是が非でも結果が欲しいところ。そもそも招待選手の立場なら、誰だって1本でも多くのヒットが欲しい。

 ところが川崎は今、「ヒットが欲しいスイングはしていない」と理想を追い求める。
 
「この(キャンプでの)1カ月半は自分でもテーマがあるんで、そのテーマに基づいた中でのスイングをして、ヒットは出るときは出る、出ないときはずっと出ないかも知んない。けど、それぐらいの自分の中でチャレンジをしてる取り組みがある」

 裏を読み解けば、開幕メジャーを目標とするようでは、そこまでの選手。そんな目先のことではなく、打者としての進化こそが視界にある。求めるスイングさえできれば、メジャーは後でついてくる……ということか。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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