「後悔しない人生なんてクソくらえ」 川崎宗則、プロ18年目の全開キャンプ

丹羽政善

疲労マックスも試合ではハッスル

「ヒットが欲しいスイングはしていない」と理想を追い求める川崎 【Getty Images】

 そんな試みを知ってか知らずか、結果が出ても出なくても、カブスのジョー・マドン監督は、川崎にオープン戦でチャンスを与え続けている。

 カブスは8日にキャンプ初の休みを迎えたが、それまで川崎は13試合中8試合に出場。3月に入って最初の5試合では4試合がスタメン出場。まるで、レギュラー並みの起用である。裏には当然ながら、川崎を見ておきたいという狙いが透ける。

 ただ、それに対して川崎は、「結構ヤバいっすね。(疲れの限界が)100なら、102ぐらい」と苦笑。「こんなに早くバテるとは思わなかった。たくさん試合に出させてくれるっていうのは、ありがたいんですけど、いかんせん、自分の体力がない」と自虐的に言葉を継いだが、あながち冗談でもないよう。5日の試合前は、守備練習に参加しなかった。

「やる気が起きなかった。もう、気持ちが……。練習する気が起きないですね。試合だけに臨もうと」

 とは言え、いざ試合が始まれば声を出し、ハッスルする川崎がフィールドにいるわけだが、先日は右の太ももを試合後にアイシング、5日は右肩をアイシング。体も悲鳴を上げている。疲労困憊(こんぱい)、満身創痍(そうい)。必然、試合に集中することも難しくなっており、意識的に「集中を切っている」とさえ川崎は言う。
 
「この3日ぐらいは、リラックスもしてない。ただ単に、グランドにいるだけ。まぁそれは、賛否両論どころか、絶対にだめって言われるかもしれないですけど、ごめんなさい、正直な話、本当にそれぐらい集中してないです」
 
 真意が読めないが、「悪かったら、クビになるだけ」と川崎は開き直る。

「(集中しないことが)いいとは思わないですけど、今のところクビになってないんでね。クビになったとき、あぁ、やっぱり集中しとけば良かった、と後悔したいと思う。それぐらい疲れてます」

スタートからダッシュ「それが挑戦」

 マラソンなのに、スタートからダッシュ。ペース配分も何もない。さすがにオーバーペースになったが、それでも行けるところまで行くのみ。それで後悔しても構わない。今年36歳の川崎が、そうして限界に挑む。

「それが、挑戦です」

 ちなみにこれまでの野球人生では、後悔したことはあるのか? と振られ、「野球人生、後悔しっぱなし」と答えた川崎。

「後悔しない人生なんてクソくらえ。みんな、そうでしょ? そんなもん。でも後悔ばっかりですけど……」

 最後、少しだけトーンが下がった。

 さて、疲れが影響してか、自分が求めるスイングにはまだほど遠い。

「良かったり、悪かったりね。でも悪い方ですよね、今は。まだまだクセが抜けてないんで」

 とは言え、川崎はあくまでもポジティブだ。

「あと1カ月。まだ、始まったばかりじゃないですか。なので、しっかり振り抜いて、少しでもひらめいて、開幕のときに、『おっ、こういう感じか』ってなれば。今のうちにどんどん失敗して、そのためのスプリングトレーニングですから」

 その言葉はどこか、川崎が自分自身に、「ガンバレ、ガンバレ」と言い聞かせているようでもあった。

 ところで、上原のことをコージ、コージと呼び捨てにした川崎は、やはり、イチローに会っても、野球場では「イチロー!」と呼ぶのだろうか。
 
「いや、イチローさんだけは、『イチさん』って言います」

 川崎にとって、年功序列と野球界の体育会系のおきては、イチローにのみ適用される。
「そこは、ぶれてない」

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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