中田の“間合い”だった勝ち越し弾 世界一経験者・岩村明憲氏が解説

スポーツナビ
 第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表は8日、1次ラウンドB組第2戦のオーストラリア戦に4対1と勝利した。前日のキューバ戦から連勝の日本は1次ラウンド突破へ大きく前進した。

 試合は日本が1点を追いかける5回に松田宣浩の犠牲フライで同点に追いつく。7回に中田翔のソロ本塁打で勝ち越すと、8回には筒香嘉智の2試合連続2ランで突き放した。投げては先発・菅野智之が5回途中1失点の好投。その後は4投手の継投で無失点に抑えた。

 オーストラリア戦で勝利に結びついたワンプレーは何だったのか? 第1回、第2回大会でWBC日本代表に選出され、世界一へ大きく貢献した岩村明憲氏に解説してもらった。

勝利のポイント:中田の一発

 岩村氏が勝利のポイントに挙げたのは、「弟のようにかわいがっている」という中田の7回の勝ち越し本塁打。1対1の同点と重苦しい雰囲気の中で、ここまで無安打の中田が、相手投手の代わり端の初球をフルスイングという“らしい”一発だった。

 岩村氏は、前日のキューバ戦で無安打だったものの、2つの四球を選んだ中田の打席に注目。オーストラリア戦での活躍をある程度予想していたという。

状態の良さが見えたキューバ戦の四球

以下は岩村氏の解説。

「中田君はキューバ戦で無安打でしたけど、壮行試合や強化試合と比べると打席での状態が良くなっていました。今までは打席の中で“間”が取れていませんでしたが、キューバ戦での2つの四球はボールを打ちにいきながらも、しっかりとボールを見極めていた四球でした。それまでの試合で四球を選んでいても、結局“中田翔”のネームバリューで取れたものだったので、自分が打ちにいった中で『こういう間合いだったな』と思い出したはずなんですよね。

 キューバ戦が終わった後に、彼にLINEを送ったんですが、『ひとつ勝てたことは良かったね』とも入れたんですが、『少しずつ間が取れているね』と伝えました。彼からも『ありがとうございます』と返事をもらいましたが、オーストラリア戦でも最初の2打席はサードゴロ、ライトフライと結果は良くなかったですけど、間がしっかりと取れていたことで、ホームランにつながったし、初球からフルスイングができたと思いますね。

 2月に沖縄キャンプを取材したとき、中田君と食事をする機会があって、若くして経験を積んでいる選手ですが、『引き出しのひとつとして取ってほしい』ということで練習方法などいろいろな会話をしました。

 僕が言ったのは歩きながらスイングをしてしっかりと軸足に体重を乗せる『ウォーキングティー、ウォーキングスイングをやったほうはいい』と伝えました。打っているときはそんなこと気にしなくても打てるんですけど、打てないときは打ちたいから気持ちがどんどん焦っちゃうんですよね。ちょうど手首も痛めていた時期で、決して焦ることでもないんだけど、周りがあわてさせる部分があるので、それは彼の宿命なのでしょうがないんですけどね。

 もちろん彼の力あってこそなんですけど、僕の練習を取り入れてくれたり、稲葉(篤紀・打撃)コーチともコミュニケーションを取りながらいろいろな練習を取り入れて、状態は良くなっていったと思います」

大きかった観客の後押し

「あと、今日は観客が雰囲気を作ってくれました。5回1死満塁のピンチで投げていた岡田(俊哉)君にも激励の拍手を送ったりとか。僕もWBC日本代表を経験して、東京ドームだけじゃなくて2月の宮崎合宿の初日から後押ししてもらったことを感じていましたし、東京ドームでは360度すべてから応援を受けるのはあそこを本拠地にしているチームしかないわけですから、そういう意味ではいつもと何かが違う後押しがあったことを覚えています。

 今日の中田君、筒香君にしてもホームランを打って、一角じゃなくて全方位に帽子を振っていました。それもホームアドバンテージのひとつで、あの後押しが勝ち越しホームランを打たせてくれたと思います。

 4番、5番に本塁打が出て勝てたことはチームにとって大事なことです。ただ、今日に関しては3番の青木(宣親)君が打っていないですよね。今後は3番、4番、5番が打てなくても勝たなくてはいけません。もちろん8試合して筒香君が8本塁打を打つかというと、2戦2発なので可能性はゼロじゃないですけど、確率的には難しい。

 いろいろな選手が活躍をしないと、主軸におんぶに抱っこじゃ世界一は見えてきません。そんな中で今日は下位打線の鈴木(誠也)君の2安打は大きかったですし、前日の松田(宣浩)君のような主力だけじゃない打のヒーローや、投のヒーロー、守のヒーローが出てくるのを期待したいですね」

岩村明憲プロフィール

愛媛出身。宇和島東高から1996年ドラフト2位でヤクルトへ入団。2000年からレギュラーを獲得すると、04年には44本塁打を放つなどセ・リーグを代表する三塁手としてベストナイン2回、ゴールデングラブ賞6回を獲得した。07年から渡米し、4年間でデビルレイズなど3球団で活躍。11年から日本球界に復帰すると、楽天、ヤクルトでプレーした。15年からは独立リーグ・福島で監督兼選手として在籍している。WBCには第1回、第2回大会に出場し、2度の世界一に貢献。日本プロ野球通算1194試合、1172安打、193本塁打、615打点、打率2割9分。MLB通算408試合、413安打、16本塁打、117打点、打率2割6分7厘。
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