「最後までシンデレラを演じ切った」 三原舞依、強みはミスしない総合力

自己ベストを更新する200点超え

『シンデレラ』の曲で演じたFSは自己ベストを更新。合計200点超えは、日本人では4人目となる 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 フリースケーティング(FS)は、三原が上位3選手を上回り、初出場初優勝を果たす劇的な展開だった。激しい戦いとなった最終グループの滑走順は、長洲未来(米国)、三原、チェ・ダビン(韓国)、ケイトリン・オズモンド、ガブリエル・デールマン(共にカナダ)、エリザベート・トゥルシンバエワ(カザフスタン)。デッドヒートの先頭を切ったのは長洲だ。すべてのジャンプをクリーンに着氷。求心力の高い演技でその時点で首位に、総合では194.95点で3位になる活躍だった。

「この瞬間のために毎日厳しい練習に明け暮れて、調子が悪くてもプログラムを通して練習し、転んだら立ち上がっているんです」とベテランの矜持(きょうじ)を見せた。

 2番滑走の三原は、『シンデレラ』の曲で、大舞台のプレッシャーを跳ね返すパーフェクトな演技を見せた。3回転ルッツ+3回転トウループのコンビネーションを皮切りに、高く跳び上がって素早く回る小気味のいいジャンプを決めていく。軽いタッチで滑るスケーティングにもスピードがあり、初々しいプログラムを滑り終えてうれしそうな表情がはじけた。FSで134.34点の自己ベスト、総合で200.85点を出して、この時点で首位に立ち、後続の選手の演技を待った。

 地元韓国の期待の星チェ・ダビンが健闘を見せるなか、上位選手たちにはミスが相次いだ。

 SP2位のオズモンドは、3つ目のジャンプである3回転ルッツで転倒すると調子を崩し、その後もミスが続いてしまった。だが、ダイナミックで爽快感あふれるジャンプと、指先まで神経を行き届かせて物語のキャラクターを描く表現力では今シーズンの大きな進境をうかがわせ、総合で4位となった。

 首位だったデールマンは冒頭に大きな3回転トウループ+3回転トウループ、3回転ルッツを決めたが、その後ジャンプのパンクや手をつくなど細かいミスが出て、総合196.91点で三原に逆転を許す2位に。だがISU(国際スケート連盟)主催のシニア国際大会における初めてのメダル獲得に、「とてもいい勉強になりました。緊張しましたが、コーチの助言で、その緊張を生かして、練習でやった通りに滑ることを心掛けました」と、学びが大きかったことを強調。トゥルシンバエワは不本意な出来で、総合8位と順位を大幅に下げてしまった。

 日本勢はほかに、ジャンプが決まらずキス&クライで大粒の涙をこぼした樋口が9位、『リバーダンス』で会場を沸かせた本郷が10位。17歳の全米女王のカレン・チェンは12位、全米3位のマライア・ベルが6位、見事なFSを見せた中国の李子君は7位だった。

失敗したら曲を止める練習スタイル

中野園子コーチがFSの曲に『シンデレラ』を選んだのは、復帰のシーズンを「ハッピーエンドで終われるように」という思いがあったからだ 【写真:Lee Jae-Won/アフロ】

 最終グループの最後まで1位を守った三原は、日本人として4人目、自身初の200点超えで優勝が決まり、素直な喜びを語った。

「自分が1位という場所にいることが信じられません。フリーは思い切って最後までシンデレラを演じ切ることができてよかったなと思います」

『シンデレラ』は、中野園子コーチが「シンデレラのようにハッピーエンドで終われるように」と、復帰のシーズンを迎える三原のために選んだ曲だという。三原の強みはどの大会でも安定してミスなく演技をまとめあげる総合力だが、中野コーチは「(たくさん選手がいるので)音楽をかけた通し練習は、自分が失敗したらそこで終わる。曲をかけたかったら全部ミスなくやるしかない。曲がかけられるのは1日1〜2回。ジャンプだけでなく、スピンでもステップでも、失敗したら曲を止める」という練習スタイルを明かした。ミスが少ない理由の一端はこのあたりにもありそうだ。

「同じ会場なので、五輪を意識することが多かった」と語る三原。結果はもちろん、貴重な経験を得る試合となったことだろう。これをスプリングボードに、シンデレラガールがどんな躍進を見せるのかが注目される。

 女子の表彰式では、2010年バンクーバー五輪金メダリストで平昌五輪広報大使を務めるキム・ヨナが登場し、メダリストたちを祝福。韓国の観客の大歓声を浴び、五輪のプレ大会に文字通り華を添えた。

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