巨人キャンプで見た打撃の意識 サク越え本数に踊らされるな!!

菊地高弘

例年よりハイペースで調整している坂本の打撃練習 【写真は共同】

 巨人のキャンプに活気がない――。

 そんな感想を漏らす野球解説者が多いようだ。今春の巨人キャンプを4日間見た筆者からすると、「言われてみれば、声はあまり出ていなかったかも……」というくらいで、取り立てて気になるレベルではなかった。高校野球ならともかく、プロ野球ならばこんなものではないか、という平凡な感想しかない。

 ただ、それ以上に気になったことがある。巨人のフリーバッティングを見ていると、「サク越えホームラン」が他球団に比べてだいぶ少なかったのだ。

 同じ宮崎でキャンプを張る福岡ソフトバンク、埼玉西武のキャンプも同時期に見に行ったのだが、ソフトバンクのフリーバッティングは壮観だった。脂の乗った主力級はもちろんのこと、昨年はほとんどファーム暮らしだった上林誠知、塚田正義、真砂勇介といった若手が、スタンドインの打球をポンポンと放り込んでいく。とくに上林はアイビースタジアムの場外に消えていくような、とてつもない放物線の打球を何本も見せ、「俺を使ってくれ」という気概を感じたものだった。

 一方の巨人はというと、阿部慎之助、坂本勇人、村田修一、長野久義といったチームの顔でも、ほとんどサク越えが見られない。彼らはキャンプ序盤の調整の最中だから仕方ないとしても、期待の若手である岡本和真も豪快なアーチはほとんど見られなかった。長打力が目立っていたのはクルーズやマギーといった外国人勢。あとは北海道日本ハムから移籍してきた石川慎吾がパンチ力のある打撃を見せていたくらいだ。

 やはり、巨人のキャンプは活気がないのだろうか……。

 それと同時に、ひとつ疑問が湧いた。「巨人の選手たちは、そもそも『サク越え』を目指していないのではないか」ということだ。

まずは逆方向への打撃から

 スポーツ新聞などではキャンプ中の「サク越え」の本数が盛んに報道される。とくに未知数の新戦力が入団した際は、「○スイングで△本のサク越え」という定型化した内容が伝えられることが多い。打撃投手が打ちやすい球を投げているフリーバッティングとはいえ、そのサク越え本数から選手が持っている根本的なパワーや打者としてのタイプは伝わってくるため、有益な情報に感じられる。

 しかし、巨人のフリーバッティングを見ていると、気持ち良さそうにサク越えを狙ってスイングしている選手はほとんど見られない。東京ヤクルトなどで現役時代に通算83勝を挙げ、一昨年から巨人の打撃投手を務めている藤井秀悟さんはこう言っていた。

「キャンプの序盤だからだと思いますけど、みんな逆方向(右打者ならライト方向)に打って調整するバッターが多いですね。僕らバッティングピッチャーもアウトコースに投げるのがほとんどなので、逆方向に打ちやすいというのもあるでしょう。シーズン中も逆方向から打つ選手が多いですよ」

 ベテランはとくに顕著だったが、ほとんどの選手が最初は狙いすましたかのように逆方向に打っていき、体がほぐれてくるにしたがってフルスイングで長打性の当たりが増えていく流れだった。

 江藤智打撃コーチに聞くと、「チームとしてバッティング練習で『センターから逆方向に打っていこう』という話はしてある」という。

ボールをギリギリまで呼び込む意識

 今季から巨人に加入した強打の外野手・石川にその効用を教えてもらった。

「(2月上旬の)この時期にポイントを前にしてパンパン打っても、あまり意味がないと思います。シーズンに入ったら速いボールに差し込まれてしまうので。今の時期はボールをじっくりと呼び込んで打つ意識を大切にしています」

 ボールをギリギリまで呼び込み、体を瞬時に反応させて逆方向に打球を運ぶ。とくに長野など、そうした意識がはっきりと伝わる練習だった。そして、石川は付け加えるようにこうも言っていた。

「逆方向への意識という意味では、日本ハムのほうがもっと言われていました」

 大きな打球を飛ばしたいなら、右打者ならレフト方向へ「引っ張る」打ち方をするはずだ。巨人はあえて逆方向を意識して調整しているため飛距離が伸びにくく、結果的にサク越え本数が増えないのだろう。

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著者プロフィール

菊地高弘

1982年生まれ、東京都育ち。野球専門誌『野球太郎』編集部員を経て、フリーの編集兼ライターに。元高校球児で、「野球部研究家」を自称。著書『野球部あるある』シリーズが好評発売中。アニメ『野球部あるある』(北陸朝日放送)もYouTubeで公開中。2018年春、『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)を上梓。

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