引退を決めたフランク・ランパード 寡黙な「史上最高のMF」に感じる“男気”
同輩や評論家たちが「史上最高のMF」と太鼓判
そんな雄姿にもしもダブッて映るものがあるとしたら、多分、全盛期のロイ・キーンくらいだろうか。だが、ランパードはキーノ(キーンの愛称)のように闘志と怒りの火花をまき散らすこともなく、レフェリーに食ってかかることもなかった。敵にすごんでみせることもなければ、監督の采配に不満をぶつけることもなかった。
淡々と、それでいて不退転の気力を持ち前のオールラウンドなスキルに重ね合わせて、01〜14年まで所属した、異邦の猛者がひしめくチェルシーにあって、誰よりもかけがえのない「マストプレーヤー」として確固たる地位を築き上げた。
そうでなければ、今も破られていないアウトフィールドプレーヤーとしての164試合連続出場や、チェルシー史上最多の全大会合計通算211ゴールの記録が残せたはずがない。圧倒的な統率力で比類のないジェラード、針の穴をも通す正確無比なロング“キル”キッカーのベッカム、あるいは、マクマナマンや今ならギャレス・ベイルのような韋駄天(いだてん)ドリブラーを差し置いてまで、ほぼすべての同輩および評論家たちから「史上最高のMF」と太鼓判を押されるはずがない。
指導者としての代表復帰に、期待が膨らむ
息子の失態を見せられた直後のことで、憤まんをぶつける標的にされかねない状況にもかかわらず、仮にも代表歴を持つレジェンドの父親とその家族が、自分たちに混じって肩を落として歩いている。その姿に、ファンたちもふとわれに返ったように、一家を気遣って無言の会釈を投げ掛けたという。
そのとききっと、彼らにはしみじみと胸に迫るものがあったのだろう。フランク・ランパード・ジュニアの寡黙で断固たる「男気」を、それがなぜか、不運にも空回りしてしまった運命のいたずらについて。
そして彼らなら信じられるに違いない。いつの日か、コーチングバッジを手に、指揮官の1人としてスリーライオンズに返り咲くランパードなら、きっと何か、かつてないしたたかで熱い感動と成果をもたらしてくれるのではないか、と。
筆者の胸のうちにも、その期待が膨らんでいることを実感している。