評価すべきはチームの成功か、個人か? 曖昧になった「最高の選手」の定義

選手ではなくチームに投票している

個人賞でも所属チームのタイトル獲得が評価に大きく影響する 【写真:ロイター/アフロ】

 レアル・マドリーのクリスティアーノ・ロナウドが2つの賞を独占した16年は、明らかに個人よりチームタイトルが重視された結果となった。

 C・ロナウドは16年を通して欧州で最も重要な2つのタイトル、ユーロ(欧州選手権)とチャンピオンズリーグを勝ち取っただけでなく、多くのゴールを積み重ねた。しかし、それは誰よりも優れたプレーをしたことを意味するのだろうか。所属するチームの成功によって、彼は自動的にメッシやマヌエル・ノイアー、ルカ・モドリッチ、ギャレス・ベイル、ジェイミー・バーディー、エンゴロ・カンテ、もしくはアトレティコ・ナシオナルのアレハンドロ・ゲッラより優れたプレーをしたことになるのだろうか。

 ここで今一度問いたい。評価すべきはチームの成功に関わったことなのか。それとも最も優れたプレーをした選手なのか。

 もし優れた成績を残したチームの中から選ばれるのであれば、ズラタン・イブラヒモビッチやベイルがそれらの受賞者となることはまずないと言える。これらの賞を勝ち取れるのはクラブ、代表共にタイトルに手が届く強豪チームに所属する幸運に恵まれた選手のみ。つまるところ、われわれは選手ではなくチームに投票しているのである。

 このような傾向は、恐らく個人賞とは別に年間最優秀クラブチームと年間最優秀代表チームをたたえる賞を新設すれば変わるかもしれない。投票の公平さを保証すべく、投票者の質を向上させるのも1つだ。そうでなければ大半の記者たちを除く投票者たちにとって、「最高の選手」の定義は今後さらに曖昧になり、ますますスポーツより商業的な意味合いが強まっていくだろう。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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