早実・清宮がセンバツで掲げた誓い 自身の本塁打よりも「歴史を作りたい」

清水岳志

センバツ決定まで「緊張感あった」

今春のセンバツ出場を決めて、帽子を投げて喜ぶ清宮主将ら早実ナイン 【写真は共同】

 中庭では63人の部員は報道陣のリクエストに応えて帽子を空に投げた。見慣れてはいるが、号外が配られ、見守る学校関係者も笑顔で、いい風景だ。

 早稲田実主将の清宮幸太郎は緊張していたと思う。センバツ出場決定の電話を受けた藁谷友紀校長が中庭で待機していた選手に伝達。儀礼的なものなのだろうが、清宮が「早実スタイルで全試合戦い抜きますます。礼!」と返した一言に、いつも多くの報道陣に囲まれてインタビューを受けているときとは違って、なんとなく落ち着いていないから、面白い。その後の会見でも、「今日を迎えて校長先生から報告を受けるまで、試合よりも緊張感があって決まってホッとした気持ち」と付け加えた。

 甲子園は特別なのだろう。

「小さいころから夢に見てきた。どの球場とも違った雰囲気で自分の持ってる力以上のものが出る。ボールが遅く見えるような、自分にいいように働いてくれる」

 甲子園はどんな場所か問われ、こう答えた。

 そこに、1年の夏以来、戻る。

結束固まった年末の合宿

 さて、冬はどんな練習を行ってきたのか。12月下旬、冬季休業に入って、毎年恒例の鴨川合宿を行った。和泉実監督は合宿の意義について、「63人全員で寝泊まりして一緒に合宿をやり切る。1週間過ごして、まとまりが出てくるんじゃないか」と言った。

 去年の夏は東京都大会準々決勝で負けてしまったため、7月下旬に新チームが立ち上がった。そのまま明治神宮大会の決勝に勝ち上がるまで約3カ月半、レギュラー組とその他の部員が一緒の練習をしたり、接点を持つことが例年より少なかったのだという。

 清宮もこの合宿は「野球面だけではなくて、時間を守るなどの生活面も大事。全員での寝泊まりはここしかない。野球以外で成長しようと心掛けました」と話した。そして「GO! GO! GO!」のスローガンのもと、体重増量も合宿の目的の一つ。

 清宮本人は「夏は97、98キロぐらいで今は100キロちょっと」と5キロとまではいかないが上乗せ。「みんなもたくさん食べてくれました」とキャプテンは喜んだ。

冬のメインは基礎体力作り

 キャンプを28日に打ち上げ、年明けは1月5日から練習を始めた。国分寺の校舎から八王子市郊外のグラウンドまで約1時間をかけて通う。練習開始は16時半を過ぎ、既に辺りは暗い。冬は基礎体力作りがメインになる。

 ストレッチに約1時間をかける。キャッチボール、トスバッティング。それから部員をいくつかの班に分けて、ウエートトレ、坂道ダッシュ、素振りなどのメニューを数十分のローテーションで回していく。フリーバッティングはないし、守備ノックも週に1回ほど。照明に照らされた白い息があちこちで浮かんでいることだろう。

 また、ウエートトレの個人メニューがトレーナーによって組まれていて、ある選手は下半身強化、ある選手は背筋強化などをそれぞれこなす。実践的な練習は例年だと2月中旬からおこなわれていく。

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著者プロフィール

1963年、長野県生まれ。ベースボール・マガジン社を退社後、週刊誌の記者を経てフリーに。「ホームラン」「読む野球」などに寄稿。野球を中心にスポーツの取材に携わる。

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