セビージャに成長をもたらしたサンパオリ シメオネとの共通点と異なる「美意識」
サンパオリに代表監督就任の話が持ち上がるが……
アルゼンチン代表監督就任の話が持ち上がったサンパオリだが、高額な違約金の支払いが障害となった 【Getty Images】
アルゼンチンフットボール協会(AFA)には、1998年にエスパニョールの監督に就任したばかりのマルセロ・ビエルサを引き抜いた“前科”がある。だが今回はセビージャが設定した高額な違約金の支払いが障害となった。
サンパオリ自身も就任間もないクラブとの契約を破棄すれば、恐らく今後しばらくはヨーロッパのフットボール界への扉が閉ざされることを理解していたはずだ。それに南米の小クラブで実績を積んだ後、チリ代表をコパ・アメリカ初優勝に導いた彼にとって、このタイミングで訪れたセビージャでの挑戦は、自身のキャリアが南米での成功だけにとどまらないことを証明する、またとないチャンスだった。
公式戦40戦無敗を記録したレアル・マドリーを破る
リーグ戦のレアル・マドリー戦、セビージャは試合終了間際のゴールにより逆転勝利を手にした 【Getty Images】
実際、現時点でセビージャは獲得タイトル、チームの戦力、機能性、安定感、近年の成績といった多くの要素において、でたらめなクラブ経営の代償として2部降格の危機に瀕しているバレンシアにその位置を取って代わろうとしている。
リーガ・エスパニョーラでは18節を終えて1試合未消化のレアル・マドリーと勝ち点1差の2位につけている。さらにここ数年は出場してもグループリーグ敗退に終わっていたチャンピオンズリーグでも決勝トーナメント進出を果たしているのは、決して偶然の産物ではない。
スペイン国内新記録となる公式戦40戦無敗を樹立したばかりのレアル・マドリーを破った大金星もそうだ。12日(現地時間)の国王杯5回戦では試合終了直前にカリム・ベンゼマの同点ゴールが決まり勝利を逃した。だが、超満員の観衆がホームのラモン・サンチェス・ピスフアンを熱狂の渦に包み込んだ15日のリーグ戦では、加入直後のステバン・ヨベティッチが土壇場に勝ち越しゴールを決め、劇的な逆転勝利を手にしている。
1400万ユーロ(約17億2000万円)での買い取りオプション付きでレンタル移籍してきた経験豊富なモンテネグロ人FWは、加入からわずか数日のうちにレアル・マドリー相手に2戦連続でゴールを決めた。昨夏にパウロ・エンリケ・ガンソやサミル・ナスリ、ガブリエル・メルカド、フランコ・バスケスらハイレベルな選手を次々と獲得した後、冬のマーケットでさらに2人の即戦力を補強したのは、クラブが引く手あまたのサンパオリを満足させたかったからだろう。