台風被災地を慰問した銀次の次なる約束 「首位打者になって帰ってきたい」
子どもたちの元気な姿に安心
子どもたちの輪に入り、優しげに見守る銀次。元気な姿を見て安心したという 【写真:BBM】
子どもたちが一際目を輝かせたのは、銀次によるロングティーの実演時だった。何度か失敗すると、「あ〜あ……」という“真正直”なリアクションがあり、これには銀次も落胆。それでも数回目のチャレンジで見事に遠くへ飛ばすと、子どもたちは「すげー!」と拍手喝采だった。
野球教室を終えると、銀次は正直な感想を漏らした。
「すごくみんな元気でうれしかったし、安心しました」
夏にこの町を訪れて以来、気になっていたのは子どもたちの様子だった。川が氾濫して自宅を離れ、しばらく避難所で過ごした子もいた。災害によってトラウマやストレスを感じていないか、ふさぎ込んだりしていないか……。再びこの地を訪れるまで、そんな不安は尽きなかったという。
「逆に僕のほうが元気をもらったくらいですよ。笑顔を取り戻してほしいし、そのために来ている。野球の楽しさを伝えるために来ている。良かったです。これからもずっと、オフに来たいし、球団にも協力してもらいながら続けていきたい。つらいことはこれからもたくさんあると思うけど、前を向いてほしい」
岩手出身の大谷人気に苦笑い…
野球教室を終えると、沿岸部の宮古市に移動してトークショーを開催。募金の協力をしてくれた人たちをハイタッチで見送った 【写真:BBM】
休憩もそこそこに、今度は約50キロ離れた沿岸部の宮古市に移動し、チャリティートークショーを行った。宮古市といえば11年の東日本大震災の際に津波の被害に遭った地として知られ、先の台風でも市内の中心部が冠水するなど、度重なる災害に苦しんでいる。
トーク中に盛り上がったのが、岩手出身の大谷翔平(北海道日本ハム)との対決だ。今季は5月17日に盛岡で楽天対日本ハムが開催されるが、「どちらに勝ってもらいたいか?」と司会者が会場に問いかけると、意外にも結果は半々(やや銀次が多かった?)。銀次は苦笑いしながら大谷人気を認めざるを得なかった。
銀次がここまで精力的に活動することには、明確な意図があった。「最近、(災害関連の)報道が少ないですよね。被災地が今どうなっているのかを、県内でもしっかり伝えなきゃいけない。僕がやっているプロ野球選手は、夢のある職業。僕らには子どもにパワーを与えることができるはずだから、続けていきます」。そう語る視線はどこまでも真っすぐだった。
「次は首位打者になって帰ってきたい」
その約束を果たすべく、銀次は今季もひたむきにバットを振り続ける。
(取材・構成=富田庸)