台風被災地を慰問した銀次の次なる約束 「首位打者になって帰ってきたい」

週刊ベースボールONLINE

子どもたちの元気な姿に安心

子どもたちの輪に入り、優しげに見守る銀次。元気な姿を見て安心したという 【写真:BBM】

 楽天球団による野球教室が開催されたのは、好天に恵まれたとある日曜日。岩泉中のグラウンドへ向かう野球少年少女たちの足取りの軽さに高揚感が読み取れた。そしてユニホーム姿の銀次が姿を現すと、「わあっ!」と声が上がる。それでも、プロ野球選手に野球を教えてもらえるとあって、表情は真剣そのもの。「打つときはテークバックをしっかり取ってセンターへ打ち返すんだよ」と銀次がアドバイスをすると、子どもからは「テークアウト?」の返答。これには「それはハンバーガーだろ!」と銀次が爆笑。その後も、ほのぼのとしたやりとりが続いた。

 子どもたちが一際目を輝かせたのは、銀次によるロングティーの実演時だった。何度か失敗すると、「あ〜あ……」という“真正直”なリアクションがあり、これには銀次も落胆。それでも数回目のチャレンジで見事に遠くへ飛ばすと、子どもたちは「すげー!」と拍手喝采だった。

 野球教室を終えると、銀次は正直な感想を漏らした。

「すごくみんな元気でうれしかったし、安心しました」

 夏にこの町を訪れて以来、気になっていたのは子どもたちの様子だった。川が氾濫して自宅を離れ、しばらく避難所で過ごした子もいた。災害によってトラウマやストレスを感じていないか、ふさぎ込んだりしていないか……。再びこの地を訪れるまで、そんな不安は尽きなかったという。

「逆に僕のほうが元気をもらったくらいですよ。笑顔を取り戻してほしいし、そのために来ている。野球の楽しさを伝えるために来ている。良かったです。これからもずっと、オフに来たいし、球団にも協力してもらいながら続けていきたい。つらいことはこれからもたくさんあると思うけど、前を向いてほしい」

岩手出身の大谷人気に苦笑い…

野球教室を終えると、沿岸部の宮古市に移動してトークショーを開催。募金の協力をしてくれた人たちをハイタッチで見送った 【写真:BBM】

 その後、地元テレビ局の取材に応じ、「好きな食べ物はじゃじゃ麺」と“地元愛”をアピール。「ちょっと硬めにゆでるのがいい。地元から仙台に送ってもらっています。翌日、人と会う約束がなければ、にんにくをたっぷり入れますね」と報道陣の笑いも誘っていた。

 休憩もそこそこに、今度は約50キロ離れた沿岸部の宮古市に移動し、チャリティートークショーを行った。宮古市といえば11年の東日本大震災の際に津波の被害に遭った地として知られ、先の台風でも市内の中心部が冠水するなど、度重なる災害に苦しんでいる。

 トーク中に盛り上がったのが、岩手出身の大谷翔平(北海道日本ハム)との対決だ。今季は5月17日に盛岡で楽天対日本ハムが開催されるが、「どちらに勝ってもらいたいか?」と司会者が会場に問いかけると、意外にも結果は半々(やや銀次が多かった?)。銀次は苦笑いしながら大谷人気を認めざるを得なかった。

 銀次がここまで精力的に活動することには、明確な意図があった。「最近、(災害関連の)報道が少ないですよね。被災地が今どうなっているのかを、県内でもしっかり伝えなきゃいけない。僕がやっているプロ野球選手は、夢のある職業。僕らには子どもにパワーを与えることができるはずだから、続けていきます」。そう語る視線はどこまでも真っすぐだった。

「次は首位打者になって帰ってきたい」

 その約束を果たすべく、銀次は今季もひたむきにバットを振り続ける。

(取材・構成=富田庸)

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