【UFC】ロンダ・ラウジー、復帰戦へ(後編) 「背筋を伸ばして堂々と引退したい」

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「お金はモチベーションにならない。私はレガシーのために戦う」

お金のためでなく「自分のレガシー」のためにもう一度リングに上がる 【Zuffa LLC】

「『お金がモチベーションになる』などと言うことはくだらないこと。フロイド・“マネー”・メイウェザーとかコナー・“マネー”・マクレガーは、いつも金だ、金だと言ってアングル(注:プロレスの隠語でストーリーラインのこと)を打っている。この社会には金銭崇拝が根付いているから、これが人の注意を引くための最も安易な方法ではあるのだけれど、だからといって正しいことだとは限らない。私もかつては貧乏でお金なんてなかったけれど、だからといってこの世の終わりだったというわけでもない」

 ラウジーには経済的な心配はもはやない。それに、格闘技を辞めてもハリウッドからの映画出演のオファーも引きも切らない。もともとお金にはそんなに執着しないタイプだ。「私とトラビス(・ブラウン)と、アイダホあたりの森の中に小さな家を買って、子どもをポンポン産んで、一緒に雪だるまを作れれば本当にそれでいい」という簡素な将来像を口にする。

 ではラウジーはなぜ再びケージに戻り、また負けるかもしれないというリスクを冒すのだろうか。ラウジーはこう語っている。

「背筋を伸ばして堂々と引退したい。今の私は“まだこの絵は完成していないんだけどなあ”と思っている画家のような状態。これで完成だと言ってしまっても、まあ、いいのかもしれない。その絵を買いたいという人がいるなら、売ってもかまわない。でもそんなことをしたら、これからずっと、あの絵は本当はもっといい作品になったのに、と思い続けることになってしまう。自分のレガシーはその程度のものであってほしくない」

この試合は間違いなくファイナルマッチの1つになる

今回の試合はラウジーにとってファイナルマッチの1つ。仲間とともにもう一度輝けるか。 【Zuffa LLC】

 UFC会長のデイナ・ホワイトは、もともとラウジー復帰戦の舞台として、実は11月にニューヨークで行われた「UFC 205」を念頭に置いていた。長年待望してきたマディソン・スクエア・ガーデンでの記念すべき初開催である。ラウジーにも、これがビッグファイトであることも、UFCにとって重要な大会であることも、重々分かっていた。デイナ・ホワイトから直接の依頼もあった。それでも、準備期間が不十分だとして、ラウジーは断った。

 10月にラウジーはオリンピックボクサーを1週間招へいし、ボクシングのスパーリングに専念した。練習内容はこうだ。そのボクサーはずっと距離を取り、ラウジーのパンチを受けないようにして、まるで判定勝ちを狙うような戦い方を続ける。ラウジーはそんな相手との距離を詰めながらも、あえてテイクダウンをしないのだ。本能的にテイクダウンを狙ってしまうところを辛抱するのがこの練習の趣旨だった。なぜなら、本能的にテイクダウンを狙ったところを、ホリー・ホルム(米国)に打ち返されたからだ。アマンダ・ヌネス(ブラジル)だって同じ手を試さないわけがない。

 11月に『エレンの部屋』に再出演したラウジーは次のように語っている。「この試合は間違いなく、私のファイナルマッチの1つになるでしょう。だからみんな、見ておいた方がいいわよ。お楽しみはそんなにいつまでも続かないから」

 ラウジーの道場の壁には、標語が貼ってある。ヘッドコーチのエドモンド・タヴァーディアンは、ラウジーのために「星を見るには一定の暗さも必要だ」と書いた。ラウジー自身が書き出したのは、次の3つの言葉だった。

「FTA (F- Them All)」

「成功こそ最高のリベンジ」

「やり始めたことは最後までやり抜こう」

 格闘技ファンなら、この希代のファイターの、どん底からの“FTA”を見ずして年を越せるわけもない。(文:高橋テツヤ)

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