拠点の選定がパフォーマンスを左右する ラグビーW杯公認キャンプ地の役割とは?
ハード面だけでなくソフト面も重要
各チームが公認キャンプ地でどう過ごすかが大会の質を上げることにつながると説明する伊達氏 【スポーツナビ】
――公認チームキャンプ地選定において一番のポイントは?
個人的には、先ほども言いましたが相性ですね。「五つ星ホテルがあって、最高級のピッチがあって、すべてそろっています、だから絶対選ばれます」ということではないんですね。チームが視察して、そのチームが求めているものがそこにあれば、そこが最高の場所になります。そして、それはハード面と同時にソフト面が大事です。チームに寄り添いながら、付くときは付く、離れるときは離れるという気持ちも重要かなと思います。
――公認チームキャンプ地決定に、その場所のラグビー熱は重要?
そこも相性みたいなもので、視察した関係者が、「ここにはラグビーが根付いている」と感じれば、決め手になるかもしれませんが、なかなかそこまで左右するポイントになることはないと思います。
――公認チームキャンプ地になることの経済効果は?
専門家ではないので効果の数字は出せないのですが、ただこんな例はありました。滞在した選手がSNSで「ここは本当に良かった。ホスピタリティーも最高だった。家族でまた来たい」と発信したことで、それが拡散して国内からのお客さんが増えたとのことです。
――日本代表は開催国として公認チームキャンプ地選びにアドバンテージはある?
これはラグビーの精神にのっとって他チームと同様に、フェアに公平に対応するので、ジャパンだけが特別ということはありません。
――チームが宿泊するホテルに五つ星、四つ星など決まりは?
日本にはなかなかそういった基準がないので、チームが満足すればそれがそのチームの五つ星になります。基本的にはチームが判断します。
――ホテルが狭すぎるということは?
体が大きい選手が多いので、なるべく大きい部屋を求めますが、そこはお国柄もあるので基本的にはあるものの中からチームに選んでもらいます。ただラグビーの場合はW杯でも基本的には二人部屋ですね。これはラグビーのスピリットにも合っていて、ベテランと若手を組み合わせていろいろ教えていくと。ただ若手にとって、部屋割り発表の日はやはりいろいろ気になるようです。
――食事はホテルで用意? 調理師が帯同?
調理師が帯同するケースは他の競技では聞きますが、ラグビーの場合はあまりないですね。チームの栄養管理士の要望を元に、ホテル側と調整して食事を提供していただく場合が多いです。
――ホテルから練習場へなど距離の目安は?
近ければ近いほどいいですが、この街は移動が25分で、こっちは32分だからということで良し悪しが付くわけではありません。チームの優先度がピッチ状態であればプールなどは多少遠くても大丈夫となるかもしれません。一応の目安としては各施設へ30分以内で移動できることとしています。
――キャンプ地のセキュリティーは警察、民間?
選手とセキュリティーとが一緒に並ぶと、どっちがどっちを守っているかが分からなくなるような絵になりますね(笑)。基本的にはチームにはチームセキュリティーとして民間のセキュリティーが付きます。ただ地元の警察とも連携をして、チームの安全だけではなくファンや観客の安全もしっかり確保しなくてはいけません。そこは警察でできること、民間でできることを分けて計画をたてて実行していきます。
――公認チームキャンプ地をきっかけに、地方でのラグビー熱を盛り上げる仕掛けは?
公認チームキャンプ地もそうですし、W杯自体がラグビーにとって大きなチャンスだと思います。ラグビーのすそ野を広げつつ、W杯はラグビー最大のお祭りですので、まずは19年にその魅力を多くの人にしっかりと味わっていただき、良さを感じてファンになってもらえればと思います。
――19年にチームサービスに携わることを希望しています。実際にできることは?
現在職員を求人サイトなどで公募しています。ぜひ応募ください。最終的には250人くらいの組織になると思います。ほかボランティア含めてラグビーを知っている方に協力していただかないと成り立ちませんので、ぜひお願いします。
――一般の人がどう関わることができるでしょうか?
ボランティアとして関わることもできますし、ラグビーが好きでしたらぜひ機運醸成ということで、ラグビーに関するいろいろなイベントを盛り上げてほしいです。チームをもてなすプログラムもわれわれと一緒にぜひ作り上げていってほしいと思います。
――大会ボランティアに必要な資質は?
笑顔と忍耐力でしょうか。というのは冗談半分ですが、まずは楽しむことですね。楽しいという気持ちがないとなかなか続かないですね。
――いままでの経験で一番苦労したこと、一番うれしかったことは?
うれしかったことは以前担当したチームの関係者に、その2、3年後に別の機会で会った時にフルネームで呼んでもらえたことですね。2、3週間しか一緒にいなかったのですが、ちゃんと覚えていてくれて、忙しい手を止めてあいさつに来てくれました。大変だったことは、終わる瞬間まではその一秒一秒がつらいです。次は何をする、その次は何を、と常に気が抜けずに大変です。ただ最後に「ありがとう」と言われると、その瞬間にすべてのつらかった気持ちが消えてなくなります。なので、何がつらいかは具体的には覚えていないですね。
――このチームはやりたくないな、ということは?
それはないですね。ただ恥ずかしかったことはあります。以前アラビアンガルフというチームが来日した時に、そのチームの伝統でラクダの人形を持った時に「Dead Ants(死んだ蟻)」と言われると、寝そべらないといけないんです。それを東京駅でも羽田空港でも高級ホテルのロビーでもやらされて、恥ずかしかったですね。それをやらないとチームの一員として認められないですから、僕にも回ってきてやりました。どのチームにもそういう伝統があるようですね。でもそれをやってチームの一員として認められると本当にうれしいですね。
■あなたにとってラグビーとは
ラグビーに感謝と恩返しの気持ちで日々仕事していると語る伊達氏 【スポーツナビ】
前回W杯の南アフリカ戦の勝利の時はまだ日本にいまして、テレビで見ていました。いつの間にか正座になって、最後は気づいたら涙をこぼしていました。恩返ししようと思っているよりも先に、大きなものを与えてもらったと思います。ラグビーだけでなく、スポーツの力を再認識しましたので、いまの自分の役割を一生懸命に全うしようという気持ちになりました。