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チームでつかんだ中央大のインカレ3連覇
石川は勝負の場となる2度目のセリエAへ

ポイントはサーブ、狙い通りの試合展開に

全日本インカレ3連覇という快挙を達成した中央大
全日本インカレ3連覇という快挙を達成した中央大【坂本清】

 1本目から、完璧に狙っていた。


「相当、いや、もう相当(気持ちが)入っていました。集中していたので、1本目からああいう形になって良かったです」


 3連覇を懸けた全日本バレーボール大学男子選手権大会(全日本インカレ)決勝。中央大のエース、石川祐希の放ったサーブは、大会のベストリベロとなった東海大の井上航ですら返すことはできず、鮮やかなサービスエースで最初のポイントをつかみとった。


 石川のみならずU−23代表の大竹壱青(中央大)や、小野寺太志(東海大)など東京五輪での活躍が期待され、代表候補にも名を連ねる選手がそろう今回の対戦。両校のベストメンバー。中央大の松永理生監督は「とにかくサーブがポイントになると思っていた」と言う。


 まさに狙い通り、とも言える石川のサービスエースが試合開始早々に飛び出した。それだけでも松永監督は「想像以上だった」と言い、東海大の積山和明監督は「選手は度肝を抜かれたと思う」と感嘆した。


 だが、それだけでは終わらない。


 リベロを弾き飛ばした後は前に落とし、次のサーブはクロスのコーナーギリギリにノータッチエース。相手のミスでブレークを重ね、もう1本同じコースに強烈なサーブを放ち、再びノータッチエースとする。スコアは7−0と中央大が一気に走った。


 東海大のウイングスパイカー(WS)、松林憲太郎は触ることすらできなかった2本のサーブを「完璧だった」と振り返る。


「あのスピード、あの軌道で来たら、アウトになるはずなんです。でもアウトにならず、コーナーギリギリにズバっと入る。触らないとつながらないから、取りに行かなきゃいけなかったけれど、足が動かなかった。結果として、あの7点で乗せてしまいました」


 絶対に負けたくない。何度もそう口にした石川にとっても、最初の7点は狙い通りの展開だった。


「2点目を取った大竹のスパイクが松林さんの顔面に当たったんです。だいぶ動揺していたから、じゃあそこを狙おうかなって。負けられないし、ここで負けたら先がないので。意地悪かもしれないですけれど、松林さんのところを狙わせていただきました」


 石川はしてやったり、の笑みを浮かべた。

全員がそれぞれの役割を全うして得た勝利

この日の勝利はまさに、全員がそれぞれの役割を全うした結果だった
この日の勝利はまさに、全員がそれぞれの役割を全うした結果だった【坂本清】

 石川が入学後、中央大は3連覇を果たした。常にメディアやファンの注目の的である石川の存在は、中央大にとって大きなものであるのは間違いないが、一方で歯がゆさもあった。4年生のリベロ伊賀亮平は言う。


「石川がいるから勝った、石川がいないから負ける。そう言われるのは仕方ないと思いながらも、正直いい気はしませんでした。確かに石川はすごいけれど、だからこそ最後の全カレ(全日本インカレ)は『石川だけじゃなく、みんなが仕事をするから勝てると証明してやる』と思っていました」


 決勝前夜のミーティングで、東海大の久原翼、松林の両エースに対してブロックはどこで跳び、どのコースを締め、レシーバーはどのボールを拾うのか。これまでの試合を分析し、いかにして相手のサイドアウトからの攻撃率や得点率を下げるか。松永監督を中心に、全員で話し合いを重ねた。


 そして、その成果は随所に現れた。試合開始直後の石川のサーブやスパイクばかりが強烈な印象を残しがちだが、決してそれだけではない。


 久原や松林のスパイクをミドルブロッカー(MB)の井上慎一郎や渡邊侑磨がブロックでワンタッチを取ってつなげ、今季からスタメンセッターとなった山下紘右が、試合中も石川に叱咤(しった)されながらトスを上げ、WSの武智洸史と伊賀がレシーブし、石川とともに大竹がスパイクを打つ。まさに全員がおのおのの役割を全うした結果が、セットカウント3−1の勝利だった。


 チームでつかんだ3連覇という快挙について、石川は「4年生を勝たせることができて良かった」と言う。そして、そんな石川に感謝を示したのが、2−1で迎えた第4セット、追う展開が続く終盤に流れを変えたピンチサーバーの4年生の寺町崚だ。


「1年の頃からずっと重要なポジションを担ってくれた石川、武智、大竹など3年生の力がなくして勝つことはできませんでした。だから最後はメンバーに入っていない4年生も含めて、上級生として後輩たちを助けたかった。自分ができたのは小さいことかもしれないけれど、勝てたことは本当にうれしかった。天皇杯は石川がいないけれど、だからこそ、あらためて『石川がいなくても勝てるんだぞ』と示したいです」


 頂点に立っても、それで終わりではない。またすぐに「石川がいなくても勝てる」と証明するための戦いが待っている。

田中夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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