サウジ戦、日本の理想的なプランとは? オランダ人監督の手腕で首位を走る古豪
かつてのアジア最強国も06年を最後にW杯から遠ざかる
サウジアラビアは最終予選4試合を終え、勝ち点10で首位を走る 【写真:ロイター/アフロ】
一昔前にはアジア最強国の1つとして君臨し続けてきたサウジアラビアだが、2006年のドイツ大会を最後に本大会の出場権を逃しており、ブラジル大会は3次予選で姿を消す体たらくに終わった。そこから現オマーン代表の監督であるスペイン人のフアン・ラモン・ロペス・カロに再建が託されたが、14年のガルフカップで準優勝したものの、チーム作りに問題があるとみなされ解任。15年8月からはオランダ人のベルト・ファン・マルバイクが指揮を執っている。
「どこでプレーしても、われわれのスタイルは変わらない。われわれのやり方があるので、一番いいやり方を編み出すようにしている」
そう語るファン・マルバイク監督は、しっかりとボールをつないでサイドに起点を作るオランダ式の攻撃スタイルをチームに植え付け、バランスを取りながら局面の1対1で選手の能力を発揮しやすい守備をオーガナイズしている。DFの吉田麻也が「ボールを保持しようという姿勢は見られるけど、クオリティーがそこまで高いとは思わない」と指摘するように、欧州の強豪国などと比較すればもちろん強度も質も高いとは言えないが、組織のベースを引き上げながら、個の特徴を発揮させる手腕は見事であり、日本にとって戦いを難しくする要因になりうる。
ファウルを誘う身のこなしには注意が必要
ナワフ・アルアビド(左)はサウジアラビアのキーマンの1人 【写真:ロイター/アフロ】
苦し紛れに蹴らせれば、もちろんロングボールも精度は落ちるし、ディフェンスがボールをクリアしやすくなる。日本と同じ「4−2−3−1」を採用するサウジアラビアは、1トップにベテランのFWナシル・アルシャムラニかナイフ・ハザジを配するが、どちらにしても吉田や森重真人が競り勝てないほどの相手ではない。ただ、少しでもクリアが不十分になれば、ナワフ・アルアビド、タイシール・アルジャッサム、ヤヒア・アルシェハリという、2列目に構える3人のアタッカーがいきなり縦のドリブルやワンツーでの突破を仕掛けてくるのは厄介だ。
3人の特徴を簡単に説明すると、左サイドのアルアビドと右サイドのアルシェハリはどちらも左利きで縦の推進力が高い。どちらかと言えばアルアビドの方がファーストタッチから加速するタイプで、“サウジアラビアのメッシ”とも呼ばれるアルシェハリは足元で受けてからフェイントなども織り交ぜる1対1の突破を得意とする。そしてトップ下に君臨するアルジャッサムはキープ力が高く、縦にも横にも仕掛けることができ、絶妙なタイミングでスルーパスも出すことができるのだ。
彼らに共通する特徴であり、ハリルホジッチ監督や日本の守備陣も特に警戒するのが、相手DFのファウルを誘う身のこなしだ。つまり高い位置でFKを獲得できる確率が高いということ。これまでオーストラリアはもちろん、同じ中東のUAEやイラクもその罠にはまっており、タイ戦とイラク戦ではサウジアラビアのPKによる3つの得点にもつながっている。日本はオーストラリア戦で、サイドを崩された流れから原口元気がPKを与えてしまったが、サウジアラビアとの対戦ではより注意して臨む必要があるのは確かだ。