数字に表れたハリルホジッチのトライ 国際親善試合 オマーン戦スタッツ分析

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後半はパスを減らし、ディフェンスの裏を狙う

パス前方比率が時間帯別で最高タイを記録した「76分〜試合終了まで」の時間帯で、小林祐希(中央)の代表初ゴールが生まれた 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 後半に入るとハリルホジッチ監督は親善試合のメリットを生かし、6枚の交代カードを続々と切っていった。交代出場した選手たちの試合後のコメントに目を向けると、ハリルホジッチ監督の狙いが見えてくる。

「とにかく裏に抜けろと言われてやりました」(久保裕也、71分から出場)

「シンプルにプレーして、裏を狙っていけと言われました」(原口元気、74分から出場)

 日本は再び縦に速い攻撃で、ディフェンスラインの裏を狙いはじめる。61分に本田に代わって浅野拓磨を投入すると、スピードを生かした攻撃を展開。加えて清武に代えて久保を投入し、2トップを試したこともあり、61分〜75分のパス数は78本と「試合開始〜15分まで(144本)」の約半分に減っている。「76分〜試合終了まで」はパス前方比率が、時間帯別では後半開始からの15分と並び最高タイの35%を記録。アディショナルタイムには原口がディフェンスラインの裏に抜け出して左サイドを崩し、小林祐希の代表初ゴールをアシストした。

 前後半で比較すると、パス数は前半の372本から後半は299本に減少し、パス前方比率は28%から34%に上昇。手数をかけずにゴールを目指すスタイルが、数字にも表れている。

後半はファウルが激増

ハリルホジッチ監督のトライの意図や成果は数字にも表れている 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 オマーン戦では後半のトライが新たな可能性を見せたのも確かだが、気になる数字もいくつかある。

 まずは相手のシュート数だ。前半はシュート1本に抑えたのに対し、後半は4本打たれている。縦に速い攻撃を仕掛けると、カウンターを受けるリスクも大きくなる。特に2トップにしてからは、サイドの選手も高いポジションを取るため、中盤が手薄になっていた。後半43分のサイド・アール・アブドゥルサラムのシュートは枠を外れたものの、マークが緩く、個の力を持った選手であれば決められていてもおかしくないシーンだ。

 前半は4個だったファウルも、後半は14個と激増した。こちらもカウンターになりそうなシーンでボールを奪われた際に、慌てて相手選手をつかんで止める場面が目に付いた。セットプレーからの失点の多さはハリルホジッチ監督も常々課題に挙げているだけに、無視できない数字だ。こうした課題をクリアしない限り、縦に速い攻撃に頼るのは危険だろう。

「たくさんのトライをした」(ハリルホジッチ監督)というオマーン戦について、15分ごとのスタッツを見ると、トライの意図や成果は数字にも表れている。サウジアラビア戦で今回のトライをどう生かすのか。15日の指揮官の選択に注目したい。

※本スタッツデータは大会公式とは異なる場合があります。

(文:豊田真大/スポーツナビ、グラフィックデザイン:相河俊介)

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