ハリル「井手口はどんどん伸びている」 オマーン戦、サウジ戦メンバー発表会見

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大迫のアドバンテージは力が強いこと

大迫について「オフェンスで今までと異なるタイプのプレーが望めると思っている」と答えたハリルホジッチ監督(左) 【スポーツナビ】

――大迫が1年半ぶりに招集された。彼に期待することは何か。

ハリルホジッチ 大迫を選んだのはロジカルだと思う。なぜかというと最近は常に試合に出ているからだ。彼と競争させたいのは武藤(嘉紀)だが、彼はいまけがをしている。大迫は常にリストの中には入っていた。昨シーズンはほぼプレーしていなかったし、クラブでやっていたポジション(トップ下)が、A代表と違うこともあった。いまもFWの少し後ろでプレーしている印象で、ひとりは大迫よりも速い選手(アントニー・モデスト)を使っている。われわれは同じオーガナイズではない。日本代表は少し役割を変えている。探しているのはより得点を取れる選手。彼がプレーするときには他の選手より得点を取ってほしいと期待している。

 今はいろいろな選手を使い分けている段階だ。オカ(岡崎)や浅野、(10月の)オーストラリア戦では本田が真ん中のFWをやった。皆さんは驚かれたと思うが、私はできるだけ良いソリューションを探しているところだ。特に得点率を高めるところについて。われわれは統計を見ているのだが、ビッグチャンスはかなり作れている。ゴール前の仕留めるところを伸ばさなければいけない。そういった理由で、より得点の取れる選手を探している。それが大迫なのか岡崎なのか、武藤や浅野なのかは分からないけれど、より良いソリューションを探している。

 大迫のアドバンテージは他の選手よりも力が強いことだ。オフェンスで今までと異なるタイプのプレーが望めると思っている。ただ、A代表の役割は彼のクラブの役割とは違う。それはほとんどの選手にも当てはまることだ。原口も同じ。クラブでは代表と同じ役割を与えられているわけではない。彼(原口)はクラブではまだ点を取っていないのだが、ディスカッションをしたあと彼は役割をよく理解してくれたので、代表では点を取ってくれている。各チームでの役割はあるが、代表では違うことを求める。

――サウジアラビアというチームをどう見ているのか。言える限りで構わないが、どう戦っていくつもりなのか教えてほしい。

ハリルホジッチ サウジアラビア戦に向けた戦略については、すでに仕事を始めている。このチームはかなり伸びていると思う。アラブの国の傾向として個人の能力が高くフィジカルが強いのだが、サウジアラビアは戦術的にも良くなっている。彼らのアドバンテージは、合宿をしたいときにできることだ。ほぼ全員での合宿ができている。そしてかなり良いレベルのプレーヤーがいるし、われわれのグループの首位でもある。これに対してたくさんのチョイスがあるわけではない。つまりまずは勝たないといけないということ。われわれにとってはそれぐらいの勢いでやらなければならない。

 そして日本は海外組で先発で出てない選手たちが、だんだんと試合に出始めた。今回はフレンドリーマッチを使って、よりコンディション回復に務めることができる。2試合目となるサウジアラビア戦では、より良いパフォーマンスで試合に臨むことができるのではないか。そしてクオリティーの高い相手に勝利しなげればいけない。

 すでに多くのディテールが私の頭にあるが、特に彼らのオフェンスについて、個人技を抑えていかないといけないと思う。そして、われわれのプレーをいかに出すか。どのような相手に対しても、これまでは多くの問題を起こしてきた。ただ、彼ら(サウジアラビア)は(W杯予選で)PKやFKをもらっている。彼らの得点のうち、50パーセントはPKかFKからだ。それに関しては注意して罠にかからないようにしなければいけない。UAE戦、そしてオーストラリア戦とPKを与えたことで、われわれの結果はかなり良くないものになってしまった。PKがなければ多くのことが変わったと思うが、サウジアラビアの選手たちはPKやFKを誘うスペシャリストだ。

 それから、彼らには弱点もあるので、弱点を突いていこうと思っている。大きな試合になるので、アグレッシブさ、戦うこと、そして強い気持ちを持つことを疑いなくやらなければならない。そして勝利を追及しなければいけないと思っている。

――2トップという話も出たが、今後は対戦相手によってシステムや前線の組み合わせを変えるのか。(河治良幸/フリーランス)

ハリルホジッチ 久保について、フットボールの世界では「2人目のアタッカー」と呼ぶ。彼が衛星的な動きをする。例えばクラブでは背後や二アサイドに走っていくプレーを見せる。われわれは他のオーガナイズがあり、普段は3トップだ。そのときは真ん中に1人と両サイドにアタッカーを置いている。彼(久保)が入ることによってアイデアが増える。ひとつのオーガナイズがうまくいかなかったとき、もしかしたら4トップになるかもしれない。2人をサイドに置き、真ん中にも2人FWを置く形だ。得点を取りにいく場面や追いつかなければいけない場面でのソリューションのひとつだ。

 われわれは試合中にもタクティクスを変えることができる。もちろんすぐに理想的な形が見つかるわけではなく、オートマティックにしなければいけない。久保はセカンドアタッカーとして面白いと思っているし、サイドで使うかもしれない。ただ、ゴールまで16メートルのエリアに入っていくプレーをするので、原口や齋藤とはタイプが違う。あとはオーガナイズを見つけないといけないと思う。今は常に先発で出ているし、先発で出ることができていない選手よりはパフォーマンスが良いだろう。

 初めてA代表に呼ぶわけだが、井手口や久保、植田もそうだ。若くてクオリティーがあって能力がある。これは齋藤もだが、すぐにリーダーになることや決定的な仕事をすることを求めているわけではない。あえて彼らを呼んでこのグループに若さをもたらしている。私にとって、若い選手はグループに入れても少し「恥ずかしがり屋」なところがある。グラウンド内外にかかわらず、まだまだ「恥ずかしがり屋」だ。ポジティブな発見は丸山(祐市)だ。トレーニング中も安定性が増したし、自分を表現できるようになった。これは将来を準備しているという意味で、いきなり決定的な仕事をするよう期待されても困るが、私は次の準備をしているということだ。

永木、山口、井手口を呼んだ意図

ハリルホジッチ監督は「ボランチ2人のプレーは補足関係にないといけない」と強調した 【スポーツナビ】

――ここまでの4試合、先制しながら試合が難しくなる展開が続いている。このような試合運びになる原因をどこにあると思っているか。

ハリルホジッチ みなさんの分析と私の分析がどうかは分からないが、まだ試合展開(の中)から失点したわけではない。失点はしているが、PKを含めてCKやFKからの失点が多い。そこを私は強調しているわけだ。基準をどこに置くのか。まずは16メートルの中でファウルをするな。われわれにとってかなりきつい状況になる。

 ただ、相手の展開の中ではまだまだやられていない。それは(就任してからの)ここ2年そうだ。オフィシャルな試合では展開の中から失点はしていない。かなり厳しい時間帯ももちろんあり、ここまで(最終予選で)4失点しているが、FKでやられている。オーストラリア戦も見直したが、悪夢のPKがなければ、オーストラリアは日本から点が取れなかったと思う。PKとFKでやられたのはわれわれがナイーブさを見せからだ。今回の合宿では16メートルの中では「ナイーブさを見せるな」と言いたい。守備面でまだまだ伸ばすところはあるのだが、フットボールの目で見れば、守備のオーガナイズはしっかりしてきているし、そこは伸びたと思う。

 今ディフェンスの話をしたが、DFだけで守備をするという意味合いではない。全員がブロックであるということが、私にとっての「ディフェンシブ」という言葉の意味だ。オーストラリア戦を振り返ってみよう。本当にチームが良い守備をしたと思う。前線の可能性はもう少し伸ばさなければいけないが、多くの試合で選手たちはディフェンスの仕事をきっちりとやっていると思う。

――ボランチについて質問。ゲームメーカータイプを呼ばず、永木、山口、井手口とタイプの似た選手を3人も呼んだ意図を教えてほしい。

ハリルホジッチ メンバーリストの説明にもあったのだが、オフェンシブな中盤とディフェンシブな中盤がある。永木は長谷部(と同じタイプ)、試合をコントロールするイメージだ。そして井手口と山口というタイプがいる。少しオフェンシブに働きかけることができる。井手口の最近の試合を見たと思うが、3点素晴らしいゴールを決めた。昨日(J1最終節の川崎フロンターレ戦)はGKの弾いたボールに対して、16メートルの中に走り込んで決めた。これはかなり良いことだと思う。

 永木や長谷部と補足関係にある選手を見つけなければいけない。山口蛍がイラク戦でゴールを決めた。前に行くことができるクオリティーを持った選手で、点を取ることもできる。井手口は毎試合どんどん伸びている。ボールを奪ってからつなぐパスも、背後へのパスも良い。つまり、私の頭の中では彼ら(永木、山口、井手口)は同じタイプではないということだ。

 香川や清武、小林はもっとオフェンシブで、より組み立てに関わってほしい。より16メートルの中に入ってほしい。われわれのオーガナイズでいうと、真ん中でオーガナイズをする重要なところだ。彼らからボールが送られるのだから。ただ、ボールキープ時間が長いと大変で、前にいくスピードを遅くしてはいけない。よりスピードアップしてほしいというのが彼らに求められる役割だ。ボールを供給する、最後のフィニッシュのところだ。オフェンシブMFはセカンドアタッカーにもなる。彼らは身長が大きくないが、香川も清武もヘディングでゴールを取ったりできる。本当に決定的な仕事をしてほしい選手を私は分けている。

 それから(ボランチ)2人のプレーは補足関係にないといけない。つまり永木と井手口は同じタイプではないのだ。それぞれに代わるメンバーをこのオーガナイズでは選んでおかなければいけない。蛍もJ2でプレーしているが、このリズムでずっとプレーしていると不安になる。彼のボールを奪うプレーに関してはものすごい能力がある。ものすごく速いし、爆発的だ。そういったプレーができる選手は少ない。井手口はそこに近い。同じポジションに2人ずつくらい選手がいるというのが私のイメージだ。そして全然違う役割のプレーをさせる。それが私の見方だ。井手口は美しい得点も取るし、本当に前にいける。しかも20歳で将来もある。いきなり決定的な仕事をしてほしいとは思っていない。若い選手はまだまだ年上に遠慮している面がある。もっと勇敢に、アグレッシブにやっていいと思うし、もっともっと自分から仕掛けていい。若い選手たちが目上の人たちに遠慮せずプレーできるような雰囲気を作っていきたい。

※質問者に関しては、掲載許諾の確認が取れた方のみ明記しています。記名のない方は確認が取れていない方ですので、拒否されている訳ではありません。

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