U−19代表、三好康児が示した成長の証 プロ1年目の挫折で手にした客観的な視点

安藤隆人

AFC U−19選手権の優勝に貢献

バーレーンで三好(前列左から3番目)は1年前から成長した姿を見せ優勝に貢献した 【写真は共同】

 迎えたAFC U−19選手権で三好はグループステージ初戦のイエメン戦、第3戦のカタール戦、準々決勝のタジキスタン戦、決勝のサウジアラビア戦にスタメン出場した。グループステージ突破を懸けたカタール戦では、先制後にDF中山雄太のヘディングシュートが決まったかに見えたがオフサイドになるなど、嫌な空気が立ちこめた。しかし、三好は前半終了間際の45分にCKのこぼれから目の覚めるような強烈ミドルシュートを自慢の左足でたたき込み、3−0の勝利に貢献をした。

 勝てばU−20W杯の出場権を獲得できるタジキスタン戦では、1−0で迎えた19分にMF市丸瑞希の縦パスに抜け出すと、「相手がクロスを警戒して、中央を締めてくる分、ファーが空くと思った」と、ファーサイドでフリーになったMF堂安律へ正確なマイナスのクロスを送り込み、試合を決定付ける2点目をアシストした。

 サウジアラビアとの決勝では、「U−16(12年のAFC U−16選手権)のときも決勝を経験した。決勝は違った戦いになるので、全員で気を引き締めたい」と、自身の経験をチームに還元し、落ち着いたプレーを見せた。しかし、60分にドリブルで仕掛けたところで相手の危険なタックルに遭い、MF遠藤渓太と交代を余儀なくされた。

「僕としては決勝で何もできなかったので悔しいです。負傷交代ということで、チームに迷惑をかけてしまった」

 PK戦の末に初のアジアチャンピオンの座をつかみ取ったが、試合後の彼はしきりに反省の弁を述べていた。だが、1年前の自分からは明らかに大きな成長を遂げ、立場は変わった。U−20W杯の出場権と、アジア王者の座をつかみ取り、彼はサッカー選手としても、人間としても成長したことを、バーレーンの地で示したことは間違いなかった。

三好「これからがスタート」

「川崎に帰ったら、チームでスタメンを取りたいです。世界大会で戦うためには、チームの主力になるだけでは足りないと思っています。もっともっとレベルアップしたいと思いますし、帰ってから戦いが始まります。これからがスタート。いい意味で優勝は自信になりましたが、個人としてはまだ何も得ていないですから。それに今後、けがも有ると思いますし、何が起こるか分からないサッカー人生の中で、すべてのことを想定した準備が必要になってくると思うので、時間は有るようでない。今の一瞬一瞬を大事にして、常に準備を怠らず、これからのサッカー人生につなげていきたいです」

 彼が手に入れた客観的な視点は、自らを律し、次なる目標設定、それを達成するために何をすべきかの道筋をはっきりと映し出していた。

 最後に逞しくなった彼に、彼の客観的な視点をもう一度確認したくなった。「自分の性格を分析すると、考え込むタイプか、それとも開き直れるタイプのどっちだと思いますか?」と聞いてみた。すると、言葉に詰まることなく、こう答えが返ってきた。

「僕は半々です。考え込むことはあるけれど、ある程度は気楽に考えられていると思います。うまくいかないときほど、もう下がないと考える。去年もそうでしたが、自分が試合に絡めなくなったり、この代表にも入れなくなったりしたときに、最後は『もうやるしかないぞ』と素直に思えた。もうユースではなく、プロになった訳ですし、心は一段大人になったと思います」

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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