ピッチ内外で問題だらけのアルゼンチン W杯予選敗退が現実味を帯び始める

守備陣と攻撃陣が分断された状態

バウサ監督が率いるアルゼンチンは、攻守が分断されてしまっている 【写真:ロイター/アフロ】

 なぜ他の監督ではなく、エドガルド・バウサをフル代表の新監督に選んだかについても、明確な説明は行われていない。

 バウサはその指導力を疑問視されている。彼は攻守の比重やポジショニングのバランスを重んじる監督だ。過去にリガ・デ・キトやサンロレンソをコパ・リベルタドーレス初優勝に導いた要因もそこにあった。だが今のアルゼンチンには、そういった特徴など見る影もない。後ろは4バックと2人のボランチ。前は1トップのゴンサロ・イグアインと3人のアタッカー。その間には大きなスペースが広がり、守備陣と攻撃陣が真っ二つに分断されてしまっているのだ。

 彼が率いた4試合のうち3試合でメッシが欠場したとはいえ、他の選手たちが低調なパフォーマンスに終始していることも事実だ。アンヘル・ディ・マリアは所属するパリ・サンジェルマンでもうまく機能していないことを認めている。マンチェスター・シティでは好調のセルヒオ・アグエロもそうだ。アレハンドロ・サベーラの指揮下では3トップの左でプレーし、ヘラルド・マルティーノの下ではイグアインとセンターFWのポジションを争った彼は、バウサの就任以降、ユベントスの9番の後方でトップ下としてプレーしている。

11月はブラジル、コロンビアと対戦

メッシ(右)の復帰は朗報だが、11月の相手はブラジル、コロンビアと強敵だ 【写真:ロイター/アフロ】

 サベーラが率いた14年までは4−4−2のシステムでカウンタースタイルを重視し、マルティーノの下では4−3−3のシステムでポゼッションスタイルを志向した。そして今、4−2−3−1のシステムを用いるバウサのアルゼンチンは、守る6人と攻める4人の間にほとんどつながりがなく、選手たちは窮屈そうにプレーしている。

 今のチームに何よりも欠けているのは、メンタル面の充実だ。1993年のコパ・アメリカ優勝を最後に、23年間もビッグタイトルから遠ざかる中、14年W杯から今年のコパ・アメリカにかけて、2年間で3度のファイナルに敗れたショックはあまりにも大きかった。いまだに多くの選手たちが精神的に打ちひしがれ、納得できる答えを見いだせずにいるのである。

 アルゼンチンは11月、アウェーでブラジル、ホームでコロンビアと対戦する。メッシの復帰という朗報はあるものの、この2連戦はペルー、パラグアイと対戦した10月のそれよりずっと厳しい戦いとなるはずだ。

 この2試合で勝ち点を加えるのか、さらなる窮地に追い込まれ、17年に行われる残り6試合に命運を懸けるのか。この2連戦の後に監督人事からチームを再編するのか、バウサがこのまま続投するのか。

 これらの問い掛けは、16年に別れを告げ、W杯出場国が決まる17年を迎えるころに答えを得られることだろう。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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