五輪世代加入で膨らむセレソンへの期待 ジェズスは鮮烈なA代表デビューを果たす

沢田啓明

南米予選で2連勝したブラジル

ブラジルはW杯南米予選で2連勝を飾り、順位も6位から2位へ浮上した 【Getty Images】

 9月1日と6日(現地時間)に行なわれた2018年ワールドカップ(W杯)南米予選第7節と第8節で、チッチ新監督率いるブラジル代表が連勝を飾った。まず標高2850メートルの高地キトでエクアドル代表と対戦し、19歳のセンターFW(CF)ガブリエウ・ジェズス(パルメイラス)の2得点などで3−0と快勝すると、ブラジル北部マナウスで行なわれたコロンビア戦でもエース・ネイマール(バルセロナ)の得点などで2−1で勝利し、順位は6位から2位へ上がった。

 チッチは、2012年に名門コリンチャンスを率いてクラブW杯を制し、世界王者となった実績を持つ国内ナンバーワンの監督だ。主として4−1−4−1のフォーメーションを用い、選手に攻守両面での連動性を求める。相手にボールを奪われると、できるだけ高い位置で囲い込んでボールを奪い返すか、少なくともパスコースを限定する。MF、サイドバック(SB)、センターバック(CB)が連係して相手のサイド突破に対応し、ボールを奪うとすぐにラインを押し上げ、人数を掛けて攻める。選手たちに常に至近距離でトライアングルを作り、しっかりパスをつないでゴールを目指すことを求めており、ドゥンガ前監督時代のようにCBがトップの選手に無理なロングパスを送ってむざむざとボールを失うようなことはなくなった。

 厳格だが、人情味があり、選手の自主性を重んじる。エースのネイマールであろうと戦術的な決まりごとはきっちり守らせるが、頭ごなしに命令したり、ミスをした選手をチームから追放するようなことはしない(前監督時代には、そのようなケースが見受けられた)。選手たちは、失敗を恐れることなく伸び伸びとプレーするようになった。

ジェズスはA代表初先発で全得点に絡む活躍

初先発となったエクアドル戦では、全得点に絡むという鮮烈なA代表デビューを果たしたガブリエウ・ジェズス(左、写真はコロンビア戦のもの) 【Getty Images】

 リオデジャネイロ五輪の優勝メンバーのうち、この2連戦に招集されたのは7人。オーバーエイジ枠のFWネイマール、MFレナト・アウグスト(北京国安)、GKベベルトン(アトレチコ・パラナエンセ)を除くと、マルキーニョス(パリ・サンジェルマン)、ジェズス、ガブリエウ・バルボーサ(サントス)、ロドリゴ・カイオ(サンパウロ)の4人である(ただし、CBロドリゴ・カイオは招集後に国内リーグの試合で故障したため、辞退した)。

 初招集ながらエクアドル戦でいきなり先発で起用されたのが、五輪でネイマールとともに攻撃の主軸を担ったガブリエウ・ジェズスだ。五輪直前、欧州ビッグクラブによる激烈な争奪戦の末に2700万ポンド(約37億円)とも言われる移籍金でマンチェスター・シティ入りが決まった逸材だ(ただし、クラブ間の合意で、年末までパルメイラスでプレーする)。

 後半27分、縦パスを受けると、マーカーの後方からボールを追いかけて一気に抜き去り、ペナルティエリア内でGKに倒されてPKを獲得(得点はネイマール)。試合終盤の42分には、左からのライナー性の低いクロスをヒールで流し込み、47分にはさらに見事なミドルシュートをたたき込んだ。チームの全得点に絡むという衝撃的なA代表デビューだった。続くコロンビア戦では厳しいマークを受けたが、それでも巧みなポストプレーでネイマールの決勝点を演出した。

 当面はCFのレギュラーポジションをつかんだ格好だ。ジェズスは圧倒的なスピード、優れたテクニック、高い決定力を備える一方で、守備の際にはマークする選手に付いて最終ラインまで戻るなど、戦術面でも重要な役割を果たす。今後、成長を続けて欧州でも活躍すれば、一気に世界的なスターになる可能性がある。

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著者プロフィール

1955年山口県生まれ。上智大学外国語学部仏語学科卒。3年間の会社勤めの後、サハラ砂漠の天然ガス・パイプライン敷設現場で仏語通訳に従事。その資金で1986年W杯メキシコ大会を現地観戦し、人生観が変わる。「日々、フットボールを呼吸し、咀嚼したい」と考え、同年末、ブラジル・サンパウロへ。フットボール・ジャーナリストとして日本の専門誌、新聞などへ寄稿。著書に「マラカナンの悲劇」(新潮社)、「情熱のブラジルサッカー」(平凡社新書)などがある。

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