NBAにあって日本にはない文化 試合に彩りを添える“トラッシュトーク”
引退表明したガーネットとピアースの共通点
今季限りでの引退を表明したピアース。現代では屈指の“トラッシュトーカー”としても有名だ 【Getty Images】
9月23日(現地時間、以下同)のこと。21年間に渡ってNBA屈指のビッグマンとして活躍してきたケビン・ガーネットが、自らのインスタグラム上で引退を発表した。
その3日後の26日には、リーグを代表するスコアラーのポール・ピアース(ロサンゼルス・クリッパーズ)も「これで終わりだ。僕のラストシーズンになる」という手記を『プレイヤーズ・トリビューン』に投稿。長くNBAを支えてきたスーパースターが相次いで引退表明し、リーグを騒然とさせたのだった。
40歳のガーネットは1995年、39歳のピアースは98年にNBA入り。ともにセルティックスでプレーした2008年には名門チームの17度目の優勝の立役者になるなど、このリーグで特別な存在感を発揮してきた。また、この2人は現代では屈指の“トラッシュトーカー”としても定評を勝ち得ていた。オールドファッションな魅力を保った老優が去ることに、特に寂しさを感じるファンも多いだろう。
“トラッシュトーク”とは、記者会見や試合中にダーティーな言葉で相手を挑発し、心理面を揺さぶること。単に勝ち気で攻撃的な性格ゆえにそれをする選手がいれば、相手を混乱させることをあえて言って調子を崩させるのを目的にする選手もいる。
コービー・ブライアントは、自分とマッチアップをする相手に「おまえに俺はガードできない」と冷酷に告げたという。名ガードのゲイリー・ペイトンは、目の前のディフェンダーに「おまえなんて来年はこのリーグにはいないだろうよ」と言い放った。マイケル・ジョーダンに至っては、練習中のチームメートに「おまえは生まれた時から負け犬だ」と告げ、精神的にズタズタにしたなんていう逸話も残っている。
ファイナルでも使われていたトラッシュトーク
今年6月のNBAファイナルでは、グリーン(右)がレブロン(中央)をののしるシーンも見られた 【Getty Images】
「彼の口から出たいくつかの言葉はいき過ぎだった。誇りに満ちた一人の男、3人の子供を持つ男として、彼が言ったことは受け入れ難かった」
レブロンがそう語ると、ウォリアーズ側も黙ってはいなかった。
「(レブロンは)どうやら傷ついたようだね。コート上では多くの汚い言葉が飛び交っているけれど、人によって反応が違うものだ」
クレイ・トンプソンが皮肉たっぷりのコメントを残すなど、1戦ごとの休養日が多いファイナル期間中に毛色の違う話題を提供してくれた。
いい大人の口喧嘩にはうんざりするというファンもいるかもしれない。しかし好き嫌いはあっても、これらのののしり合いも、まれに見る盛り上がりをみせた昨季の最終決戦で一種のスパイスとなったのは紛れもない事実だった。
「トラッシュトークはこのゲームの一部。やられたら、やり返す。ただ個人的なことを言い過ぎて、一線を超えてはいけない。バスケットボールはゲームなのだから、相手を侮辱すべきではない。コート上のことであるべきなんだ」(ステファン・カリー)
「一線を越えるとは、誰かの家族の話を持ち出したり、人種、性別の話をすること。それ以外の汚い言葉、ののしり言葉は、感情から発せられるもの。それらは聞き流して、コート上だけのやり合いであるべきなんだ」(トンプソン)
ウォリアーズの2人のスターはトラッシュトークの許容範囲をそんな風に説明していた。そんなスタンダードで見ると、グリーンの言葉がいき過ぎだったのかどうかは微妙なところか。もっとも、これはあくまで現代の基準に過ぎない。