「金ゼロ」でも見えた日本の好材料 いかにしてパラ強化につなげるか?
強化が進む他国のパラ事情
「障がい者水泳のマイケル・フェルプス」とも呼ばれるダニエル・ディアス(中央) 【Getty Images】
水泳ではダニエル・ディアス(ブラジル)が圧倒的な強さで金4つを含む計9つのメダルを獲得し、ブラインドサッカーは地元ブラジルが4連覇を達成したからだ。
ブラジルは、金メダル14個でランキング8位と自国開催で存在感を見せ、大会を盛り上げたが、過去をたどれば、08年北京大会、12年ロンドン大会や冬季大会でも、地元選手が活躍している。
今大会は、国家ぐるみのドーピング問題でロシア勢が不在。選手層が厚く、障がい者専用のトレーニング施設も整備されている中国が107個もの金メダルを獲得して世界を驚かせたが、2位は前回開催国のイギリスで、同国内に障がい者スポーツが浸透し、長期的な強化策が成功していることを示した。
イギリスの強さが特に光った自転車競技では、「機材の開発が進んでいる」(ロードタイムトライアルC3で銀メダルを獲得した藤田征樹/日立建機)、「種目を絞って強化を図っている」(タイムトライアル・視覚障害で銀メダルの鹿沼由理恵/楽天ソシオビジネス)、「競技パートナーの選手層も厚い」(鹿沼のパイロット・田中まい/ガールズケイリン)という。
東京へ、日本選手が見せた希望
だが、今回の日本選手の「銀」や「銅」の活躍の中には好材料もあった。若手の活躍だ。ロンドンパラリンピックをテレビで見てパラリンピックの舞台を目指すようになった陸上T52クラスの佐藤友祈(WORLD−AC)が、400メートルと1500メートルで銀メダルを獲得。在学する日本体育大の発掘事業で短距離を勧められ、ハンドボールから転向し陸上400メートル(T47)に出場した辻沙絵が、競技歴1年半で銅メダルを手にしたのである。特に佐藤は、積極的な走りで、両種目を制した世界記録保持者のマーティン・レイモンド(米国)を捉えかける白熱の展開を繰り広げた。
金メダルこそ届かなかったが、リオの地で力強さを見せた日本選手たち。今後、強化をさらに軌道に乗せ、また競技環境の整備も進めることで、東京、そして東京以降につながる活躍を期待したい。