ゴールボール、意表をつく戦略が的中 パラ連覇へ、貴重な勝ち点「1」獲得
背番号の変更が奏功
リオ切符をつかむのに苦戦した小宮ら前回の金メダルメンバー。だからこそ、挑戦者の意識を持ってトレーニングを積むことができた 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】
だが、視覚情報がまったくないゴールボールではその弾むボールの処理は非常に難しい。ましてや体格で欧米に劣る日本にとっては、ビハインドな状況といえる。実際に、リオの出場権をかけた2015年の世界選手権では、外国勢の強く弾ませるボールに対応しきれず敗れ、日本は出場枠を獲得できなかった。
ところが、その敗戦が未来に大きな影響を与えた。「金メダルチーム」のメンバーに「挑戦者」の意識が芽生えたのである。現状の問題を洗い出し、バウンドボール対策として男子を相手に練習するなど強化してきた。その結果、昨年11月のアジア・パシフィック選手権ですでにリオ出場権を持つ中国を破り、「最後の1枚」のリオ行き切符を勝ち取ったのだ。
ディフェンディングチャンピオンとしてのプライド、それに挑戦者としてのたくましさが融合した日本代表。リオでは、「ライバルの国々から徹底的に研究されている」(市川喬一ヘッドコーチ)ため、それに対応する何パターンもの選手の組み合わせや戦略を用意するだけではなく、これまでの背番号を変更して登録するなど対策をとった。もちろん、顔で対戦相手を覚えている国もあるが、背番号で認識している国も多いためだ。後者だったこの日の対戦相手・イスラエルに対しては有効だったようで、「『おい、なぜ背番号を変えたんだ』と言ってきましたよ」と市川ヘッドコーチはニヤリ。
次戦は地元・ブラジルと対戦
日本も完全アウェーの状況に追い込まれることが容易に想像できるが、「(騒音で試合を妨害するのは問題だが)明るく賑やかなのは国民性。選手にはカバーリングの位置関係の声出しをしっかりするように、とすでに指示を出しています」(市川ヘッドコーチ)とぬかりはない。
安達も「たしかに会場は独特のブラジル色に包まれるけれど、自分たちでしっかり我慢すれば、十分勝負できると思う」と、ベテランらしく冷静に分析する。勝ち点3を加えて、予選リーグ突破に勢いをつけたい日本代表。次なる戦いに注目と期待が集まる。