イチローの記録達成後からチームは低迷 戦力かみ合わずマーリンズは崖っぷち

丹羽政善

投手陣もリードを守れず

シーズン途中にパドレスから加入したロドニーだが、なかなか本領を発揮できていない 【Getty Images】

 8月の18敗のうち、7回以降に逆転、あるいは勝ち越されたされたケースが6試合もある。本来、勝ちゲームの継投は、マーリンズの強みの一つだった。開幕から、デービッド・フェルプスから守護神A.J.ラモスへ繋いで、接戦をものにしてきた。6月30日にクローザーとしての実績があり、その時点での防御率が0.31のフェルナンド・ロドニーをパドレスからトレードで獲得すると、ブルペンの厚みが一層増している。ところが、先発陣にけが人出ると、フェルプスが8月になって先発に転向。間が悪いことに、すぐのタイミングでラモスが故障者リストに入り、一気に層が薄くなった。

 結果としてクローザーの座に収まったロドニーは、なんとかセーブを積み重ねているものの、マーリンズ移籍後の防御率は5.28。彼がマウンドに上がれば安心、という状況でもなく、復帰したラモスも残念ながら不安定だ。

 先発陣に関しても、エースのホセ・ヘルナンデス以外は、良かったり悪かったりで、安定感がない。先発に回って結果を残していたフェルプスは先日、故障者リストに入った。トレードで獲得した先発のアンドリュー・キャッシュナーも散々。また、故障で戦列を離れたのは、スタントン、フェルプスに限らない。野手では、パワーヒッターのジャスティン・ボアも不在。先発陣ではともに左のチェン・ウェイン、アダム・コンリーもローテーションを外れている。

イチローの経験を生かす時だが

 こうしてみると、記録を達成するまでは、その盛り上がりのなかでチームがうまくかみ合っていたが、それ以降、投打とも、故障や不振が重なり、負の連鎖に巻き込まれ、チーム全体がもがいているように映る。

 ほとんどの選手はプレーオフ出場経験がなく、そもそもプレーオフ出場を争った経験すらない。そういう中でどう戦っていくのか。こんなときこそ、イチローの経験が生きるはずだが、若い選手らはその背中を見て何を感じるのか。

 あの日、ゴードンのロッカーからすぐ近くの丸テーブルには、みんなが飲み干したシャンパングラスが置かれていた。プレーオフに出場すれば、今度はシャンパンを口に含むどころか、体に浴びることさえできる。

 シーズンは残り1カ月。再浮上のきっかけをつかめるかどうか。

 4日の試合では、同点の9回表、イチローがインディアンスの絶対的クローザーのアンドルー・ミラーから勝ち越しタイムリーを放つなど、2点を勝ち越した。“きっかけ”にはうってつけの一打だったが、その裏、ロドニーが2点のリードを守りきれず、最近のチームを象徴する展開となってしまった。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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