sportsnavi

五輪で金、韓国女子ゴルフが強い訳
イ・ボミらが語る朴仁妃の勝因

116年ぶりの金メダルは朴の手に

 リオデジャネイロ五輪で復活を果たした女子ゴルフ競技で、116年ぶりの金メダルを獲得したのは韓国の朴仁妃だった。世界ランキング1位のリディア・コ(ニュージーランド)に5打差をつけての圧勝に「また韓国人選手か……」と思った人も多いだろう。


 過去の実績だけみれば、朴の金メダルは特に驚くべきことではないかもしれない。米女子ツアーで2012、13年と2年連続の賞金女王に輝き、プレーヤー・オブ・ザ・イヤーを韓国人選手として初めて獲得した。世界ランキングも長らく1位に君臨し(現在は4位)、今年は史上最年少でLPGAの殿堂入りを果たした。また、米女子ツアー通算17勝のうち、メジャー優勝は7回と実力的には妥当な結果とも言える。

2位に5打差を付けて圧勝した朴仁妃。今季の不調がうそのようなプレーを見せた
2位に5打差を付けて圧勝した朴仁妃。今季の不調がうそのようなプレーを見せた【Getty Images】

 ただ、今季の朴は絶不調で、「ゴルフをやめるのではないか」と思えるほどだった。


 五輪出場を控え、朴には相当な重圧がかかっていた。今季は腰痛や左手親指のケガに悩まされ、4月以降は多くの試合を欠場。五輪前の復帰戦となった韓国女子ツアーの済州サムダスマスターズで予選落ちすると、韓国のネット上には「税金の無駄遣いだ」「(4人出場できる)五輪カードの1枚が台無しになる」などの批判的なコメントが相次いだ。


 朴は心身ともに追い詰められていたし、五輪で結果を残さなければ、さらなる非難が集中することも分かっていた。そのなかで金メダルを取ってみせたメンタルと勝負強さは、あらためて彼女のすごみを知らしめるものだった。


 朴はブラジルから帰国後、空港に集まった大勢の報道陣の前でこう語った。


「韓国を代表するというプレッシャーをはねのけて勝ち取った勝利がすごく誇らしい。これまでは自分のための試合をしてきたけれど、今回は祖国のために試合をした」


 祖国のため――。この言葉を口にするのは、韓国選手特有かもしれない。そうした表現一つとっても、同国の選手が背負っている代表の重みを感じずにはいられない。

イ・ボミが見た朴の勝因

朴と同年代のイ・ボミは、復活の要因をどう見たのか
朴と同年代のイ・ボミは、復活の要因をどう見たのか【Getty Images】

 ゴルフはメンタルのスポーツと言われて久しい。世界ランキング上位者が集まったリオ五輪の女子ゴルフは、選手間の技術レベルの差はほとんどなく、誰が勝ってもおかしくない状況だった。勝敗を分けた一因にメンタルがあると考えてもおかしくはないだろう。


 なぜ調子の悪い朴が、五輪で金メダルを取れたのだろうか。そして、今回の朴の勝利を韓国人プロはどのように見ていたのか。


 それを少しでも知りたいと思い、まずは韓国代表として五輪出場を目指していたイ・ボミに聞いてみた。


 彼女は開口一番、「仁妃は本当にすごいことをやってのけましたよね!」と笑顔を見せる。イ・ボミと朴は同年代。アマチュアのころからしのぎを削り、朴の強さを身近で体感してきた一人だ。


「仁妃は周りの人たちに支えられてきたんだと思います。すごいプレッシャーの中でも、楽しんでゴルフができるように、家族の支えがあったはずです。今年は調子が悪かったとはいえ、もともと実力のある選手じゃないですか。これまで結果を残せなかった悔しさを大舞台で晴らそうという気持ちがすごく強かったのだと思います」


 イ・ボミは“絶対に勝つという気持ち”が、金メダル獲得につながったと言う。

キム・ミョンウ
キム・ミョンウ
1977年、大阪府生まれの在日コリアン3世。フリーライター。朝鮮大学校外国語学部卒。朝鮮新報社記者時代に幅広い分野のスポーツ取材をこなす。その後、ライターとして活動を開始し、主に韓国、北朝鮮のサッカー、コリアン選手らを取材。南アフリカW杯前には平壌に入り、代表チームや関係者らを取材した。2011年からゴルフ取材も開始。イ・ボミら韓国人選手と親交があり、韓国ゴルフ事情に精通している。