新天地での出場を心待ちにする小林祐希 「何気ないプレーで魅せていきたい」

中田徹

小林のプレーから感じる名波イズム

小林は名波の元でプレーした2年間を「ゴールにばかりこだわるのではなく、チームメートやスタッフに認められるために何をするか考えていた」と語る 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 オランダのファンに見せたいのは、何気ないプレーひとつでも「小林祐希がボールを持つと落ち着くな」、「小林祐希は何か嫌なところでボールを受けているな」と感じさせるプレーなのだと言う。

「日本にいた時は相手に攻められる時間が長かった。そこでどう攻撃するか、どう自分たちの攻撃の時間を増やすかを考えてやっていました。自分がボールを持った時に効果的なパスを送って、急がせないとか、ゆっくり回して後ろを休ませるとか。点を取ること、アシストすること、それはもちろん大事だけれど、『息遣いが荒くてキツそうな選手がいるな』と思ったら、一回ゆっくりさせて休ませる。そういうところがゴールより大事だと思って、日本でやっていました。 

 ヘーレンフェーンは若いチームだから、イケイケで点を取れている時は良いけれど、うまくいかなかった時に1回、クールダウンできる時間を作りたい。それができるのは頭を使えて技術のある選手。そこは日本人特有のものがあるので、何気ないプレーで魅せていきたい」

 技術があってゲームを読むことができるという自信。得点に絡むけれど、「見ている人は気付いてくれる」という玄人好みのプレー。そこに“ヴェルディマインド”と“名波浩イズム”を感じる。

「名波さんからは『お前には得点を期待していない』と言われていました。なのに、俺が点を取れるようになったのは何でだろう、と自分で考えてみました。名波さんに『やっぱり点につながる4つ前ぐらいのプレーが、最後に自分のところにボールがこぼれてくる要因になっていると思う』と言ったら『俺も現役時代、同じ考えでやっていた』と返ってきました。

(15年は)J2で1年かかって6点しか取れなかったけれど、J1の半年で5点取って4つアシストができたのは、俺にとって大きな成長です。しっかりボールに触って、サポートして味方を助けていたら、最後にボールがこぼれてくると信じて、2年間名波さんの下でプレーしてきました。ゴールにばかりこだわるのではなく、チームメート、チームのスタッフに認められるために何をするかを突き詰めて考えた2年間だったので、それはオランダでも変えずにやりたいと思っています」

気持ちはすでにホームゲームに

 20日のNECとのアウェーマッチ(2−1でNECが勝利)では、小林は観客席から試合を見た。この夏、PSVから移籍してきたベテランのスタイン・スハールスが中盤でボールを落ち着かせ、チームが失点した時にも若いチームメートを鼓舞している。「もうちょっとスタインに近づいてあげる選手がいた方が、彼もやりやすいんだろうな」などと小林はイメージを膨らませる。

「日本とは違う盛り上がり方がありました。何気ないワンタッチプレー、何気ないサイドチェンジに拍手が起こる。俺はそういうタイプのプレーヤー、何気ないプレーでいなすプレーが得意だし好きです。そういうプレーに拍手してもらえたら、すごくやりがいがあると感じます」

 試合に出ることが待ち遠しくて仕方がない。

「日本では毎週30度ぐらいの暑さの中で試合をやってきた。オランダは涼しいし、日本の半分ぐらいの気温だから(コンディションは)余裕かな。明日は9時集合なんですが、楽しみすぎて今日は眠れるかな」

 気持ちはすでに27日のホームゲーム、ズウォレ戦に飛んでいた。

2/2ページ

著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント