“世界一の連係”が導いた劇的勝利 タカマツペア、バド史上初の金メダル

平野貴也

「黄金の連係」を引き出したコーチたち

金メダル獲得の瞬間、タカマツペアに駆け寄る朴ヘッドコーチと中島コーチ 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 黄金の連係力。まだ大きな成果を挙げていない時代に、その力を見抜いて成長を信じたのが、世界のダブルスを知る2人の指導者だった。松友は、その名前を挙げて感謝を示した。

「日本代表に入って勝てなかったときから、ずっとテイさん(中島慶コーチ)は、いつか私たちを勝たせたいという思いで、たくさん練習させられ……させて下さった(笑)。本当に朴(柱奉ヘッドコーチ)さんとテイさんが日本のバドミントン界にいなければ、今の私たちはない。代表に初めて入った時のコーチがテイさんじゃなければ、私たちは代表に入っていないと思う。本当に感謝しているし、お世話になったテイさん、朴さんがベンチに入った試合で勝てて本当に良かった」

 勝った瞬間、選手が驚くほどの速さでコートに飛び出した朴ヘッドコーチと女子ダブルス担当の中島コーチのことだった。

 朴ヘッドコーチは韓国人で1992年バルセロナ五輪の男子ダブルス金メダリスト。男子複でも混合複でも勝ちまくった「ダブルスの神様」だ。中島コーチは元の名前を丁其慶といい、中国代表として男子の団体戦であるトマス杯優勝に貢献したメンバーの一人で、ダブルスの選手だった。中島コーチは、高橋、松友が金メダルを取る姿を想像できていたのかという質問に「最初から、そのつもりだった。(注目したのは)コンビネーション。ダブルスは、簡単じゃない。時間が必要。うちのヘッドコーチだって、パートナーをチェンジしていれば、私が勝てたかもしれない」と笑い、現役時代に超えられなかった朴ヘッドコーチとの戦いを例に挙げて、連係の重要性を説いた。

 間違っていなかった。抜群の連係で困難を突破する力を生み出せる。それが高橋と松友だった。大一番での大逆転勝利など、単なるまぐれで成り立ちはしない。強くなった2人の姿がそこにあった。2004年アテネ五輪で全種目合わせて1勝しかできなかった弱い日本代表を直後から強化してきた朴ヘッドコーチは「ビックリした。今まで、国際大会でこれほど厳しいスコアで逆転した日本の選手はいない。一番大事な試合でできた」と喜んだ。

 世界を知るコーチが才能を認め、努力した2人が力を示し、世界の最高峰を知る者が成長力に驚いた。表彰台に上がった高橋と松友が首にかけられたメダルは、まさしくゴールデンコンビの証だった。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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