メダル獲得のカギとなった丹羽と吉村 卓球男子団体の躍進は東京への序章

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尊敬する水谷から学んでいる吉村

吉村は水谷の背中を追いかけながら、確かな成長を見せた 【Getty Images】

 丹羽とは対照的に、熱い性格の吉村はメダル獲得が決まったあと、涙を流して喜んだ。五輪はこれが初出場。明るく振る舞っていても、期待されるメダル獲得のカギを自身が握っているというプレッシャーは感じていた。

「僕の目標で、そして絶対にやらなければいけないという使命のもと、今回メダルを獲得できてホッとしています」

 初戦、準々決勝とシングルスで勝利。準決勝のドイツ戦こそ、世界ランキング5位のドミトリー・オフチャロフに敗れたものの、ダブルスではそのドイツ戦と、準々決勝で貴重な勝利を挙げ、メダル獲得への道筋を作った。

「作戦なんてありませんでした。ダブルスがどの試合でもキーになる。ガッツを出して、死に物狂いで勝ちにいくという気持ちをぶつけました」

 12年1月の全日本選手権で、大会5連覇中の水谷を決勝で破り、高校生として当時史上2人目となる優勝を果たした(もう1人は水谷)。この10年間で同大会を制しているのは水谷と丹羽と吉村だけ。その水谷を尊敬し、プレーを見ながら常に学んでいる。6月のジャパンオープンで対戦したときは1−4で敗れ、「水谷さんのプレーに見入ってしまうことがあった」と反省した。今大会を共に戦って感じたのは、水谷が背負っているものの重さ。「水谷さんは僕らよりすごいプレッシャーの中で、しっかりと自分の仕事をしている」と、あらためてその強さに感服した。

 メダルを取ったことについては、「非常に自信になるし、自分が卓球界に存在していることを幅広く伝えることができた」と語る。23歳の吉村にとっては、自身のキャリアに大きな影響を及ぼす五輪となったのは間違いない。

東京へ、「僕を脅かしてほしい」(水谷)

左から水谷、丹羽、吉村。今回の銀メダルは東京五輪への序章となるのかもしれない 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 今年1月の全日本選手権で8度目の優勝を飾った水谷は、こんなことを言って丹羽や吉村を含めた若手の奮起を求めた。

「同じ選手が10年も決勝にいてはダメだと思うんです。その中で8度優勝していますし、もっともっと倒してほしいという気持ちもあります。丹羽もそうだし、吉村なんかもそう。一緒に練習したり、彼らの試合を見ているとまだまだかなと思います。もっと強くなってほしいですね」

 リオ五輪での丹羽と吉村は健闘し、確かな成長を見せた。とはいえ、まだまだ水谷のレベルには及ばず、団体で勝ち抜くには水谷の2勝が必要だった。中国との決勝も第2試合で、水谷が世界ランキング3位の許キンから勝利を収めたものの、第1試合の丹羽、第3試合のダブルス、第4試合の吉村が敗れて、勝負は決してしまった。

 吉村は、手応えを感じつつも、中国との差が大きいことを実感した。

「ダブルスでは、自分たちのミスを減らしていけば、勝てるチャンスがあるなと思いました。でもシングルスは課題というよりも、単に自分がまだ弱いなという感じでしたね。ただただ次の試合に向けて、自分が強くなる必要があることを痛感しました」

 水谷は、2人にさらなる奮起を求めた。

「彼らは、シングルスであまり良い結果を残すことができませんでしたが、今回はダブルスがキーと分かっていたと思いますし、ダブルスを優先した練習が多かったので、その役割を果たしてくれたのは良かったと思っています。ただ、東京五輪で金メダルを取るためには、シングルスのレベルをもっと上げていかなければいけないと思います。もっと僕を脅かすような選手がたくさん出てきてほしいですし、僕が2点落としても他の国に勝てるようになっていかないといけないと思います」

 誇るべき銀メダルだが、満足してはいけない。東京五輪では、張本智和(JOCエリートアカデミー)ら現在10代の若手もメンバー争いに食い込んでくることだろう。4年後に向けた戦いは、すでに始まっている。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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