メダル獲得のカギとなった丹羽と吉村 卓球男子団体の躍進は東京への序章

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メダル獲得のカギとなったダブルス

日本卓球界の歴史を変える戦いのキーポイントは丹羽と吉村のダブルスにあった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 リオデジャネイロ五輪の卓球男子団体で、日本は初の銀メダルを獲得した。決勝では中国に1−3で敗れ、まだまだ差があることを見せつけられたものの、日本卓球界に新たな歴史を刻んだ。この快挙に最も大きな貢献を果たしたのが、エースの水谷隼(ビーコン・ラボ)であったことは間違いない。シングルスでも、日本の男女通じて初の銅メダルを獲得したこの絶対的エースは、団体でも全勝。これまで勝ったことがなかった中国選手(許キン)を破るなど大車輪の活躍で、チームをけん引した。

 しかし、5番勝負で、3人の力の結束や総合力が問われる団体は、他の選手の頑張りが必要不可欠だ。そして、ここで重要な働きをしたのが、丹羽孝希(明治大)と吉村真晴(名古屋ダイハツ)だった。

「キーとなったダブルスで、香港戦(準々決勝)、ドイツ戦(準決勝)と苦しみながら勝ってくれた。彼らがダブルスの練習でずっと頑張ってきているのを目の前で見てきたので、その成果が表れてているのがすごくうれしいです。僕が2勝すれば、チームが勝つということでより気合いが増しました」

 メダル獲得を決めたドイツ戦後、水谷はダブルスで貴重な勝利を挙げた丹羽と吉村を称賛した。シングルス5試合を行う世界選手権とは違い、第3試合にダブルスが入る五輪方式は、特にこのダブルスが重要視される。第3試合ということで、すでに連勝していれば勝ち抜けが決まり、1勝1敗ならば王手がかかる。またたとえ前の2試合で連敗していても、このダブルスを取れば1−2となり、追い上げの機運が高まる。試合自体が盛り上がることもあり、このダブルスを取るか落とすかで勝敗の行方ががらりと変わってくるのだ。

 日本の想定は、エースの水谷が2勝して、あとはダブルスで勝つというもの。だからこそ、丹羽と吉村の出来がメダル獲得のカギだった。

4年前のリベンジを果たした丹羽

大物食いの丹羽は、前回ロンドン五輪のリベンジを果たした 【Getty Images】

「団体戦はどちらかというと苦手なんです。緊張してしまうので……」

 丹羽は不安げにそう語った。4年前、当時高校3年生だった丹羽は、団体要員としてロンドン五輪に出場した。しかし、準々決勝の香港戦で自身がダブルスとシングルスで敗れ、日本は敗退を強いられた(2−3)。

 普段は飄々(ひょうひょう)として、「自分が負けたとしてもそこまで悔しいとは思わない」と言う丹羽が、この試合については苦い記憶として胸に刻む。それだけ丹羽にとっても痛い敗戦だった。

 寡黙でありながら、挑戦心を胸に秘める選手だ。ロンドン五輪直後からドイツに渡り、ブンデスリーガに参加。2013年1月には全日本選手権で初優勝を飾った。決勝で破った相手は水谷であった。

 意外性が持ち味の選手でもある。好調なときのチキータは、世界でもトップクラスの質を誇る。倉嶋洋介監督は、「大物を食うのが彼のスタイル。丹羽はいざとなったらやるという雰囲気を持っている」と評する。しかし、それは安定感の欠如にもつながった。中国人選手に勝ったかと思えば、格下の選手にあっさり負けることもある。

 リオ五輪では、シングルスでベスト8に進出。大会前まで勝てない時期が続いたことを考えれば、大躍進であった。団体1回戦のポーランド戦ではシングルスとダブルスで敗戦。準々決勝の香港戦では、シングルスで再び敗戦を喫したものの、ダブルスでは勝利し、4年前のリベンジを果たした。

「大会前は、今回もしメダルを取れなかったら、次の五輪は難しいとか、そんなことを思ったりもしたんですけれど、メダルを取って終えることができて、また卓球をすごく頑張ろうと思いました。4年後の東京五輪は今大会よりもっと面白いと思うので、絶対に出たいという強い思いになりましたね」

 ポーカーフェイスの男は、かすかな笑みを浮かべながら、強い気持ちを口にした。

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