卓球日本女子が戦った“苦しい五輪” 「前回の銀より重い」銅メダル

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福原が明かした伊藤への思い

第4試合のシングルスを戦う伊藤(左)へ、タブレット端末片手にアドバイスを送る福原(右) 【Getty Images】

 ダブルスで再び登場した福原には、この3位決定戦をどうしても勝ちたい理由があった。もちろんメダル獲得もそうだが、何より伊藤のことを心配していたのだ。15歳の伊藤は準決勝のドイツ戦で1番手として出場。ゲームカウント2−2で迎えた第5ゲームで、相手のペトリサ・ソルヤから9−3とリードを奪っていた。しかし、そこから7連続ポイントを許し、結果的にこのゲームを落としてしまう。続くダブルスでも敗れ、2敗した伊藤は、試合後に「勝敗があそこ(第1試合)で決まってしまった」と、自らを責めた。

「もし、ドイツ戦の悔しい気持ちを引きずってメダルを逃したら、私や佳純ちゃんはもちろん、美誠にも4年間しこりが残ると思っていました。でも銅メダルを取ったら少しはマシになるんじゃないかなと。だから絶対にメダルを取るという強い気持ちで臨みました」

 その言葉どおり、福原は15歳の伊藤を巧みにリードし、ミスをしても「大丈夫」と声をかけ続けた。第1ゲームこそ落としたが、ドイツ戦の最後で泣いたエッジボールによる幸運な得点もあり、流れをつかむと、そこから3ゲームを連取し、ダブルスでも勝利を収めた。

 4番手で登場した伊藤は、先輩2人が作った流れにうまく乗った。世界ランキング4位のフェン・ティアンウェイに対して、まったく臆することなく攻めの卓球を見せる。「最後は笑顔で終わろう」。それがドイツ戦後に、伊藤が心掛けたことだった。研ぎ澄まされた集中力は、ゲームが進むごとにどんどん増していき、もはや相手にとってはなすすべがないような状態だった。

 勝利が決まった瞬間、伊藤はガッツポーズをしながら、ホッとした表情を見せた。

称賛されるべき彼女たちの強さ

銅メダル獲得が決まった瞬間、抱き合って喜ぶ福原と石川(手前)。2人はロンドン五輪より大きな重圧とも戦っていた 【写真:青木紘二/アフロスポーツ】

 結果としては、4年前のロンドン五輪で獲得した銀からメダルの色を落とした。「最低でも銀メダル以上」(伊藤)という目標を考えれば、満足いく結果とは言えないのかもしれない。

 しかし、村上恭和監督は選手たちを擁護しつつ、銅メダルを取った意義をこう説く。

「ロンドンは無欲で取った奇跡的なメダルでした。今回は『絶対に取る』と狙いにいって取ったメダルです。銅メダルでもそれには価値があります。もし仮に今回メダルを逃していたら、自分も含めて選手も自信を失う。いろいろと批判も起きたでしょう。チームランキングもロンドン後はずっと2位を維持していますし、勝てるチームになっています。東京五輪に向けて一歩前進できたと思っています」

 シングルスでは過去最高の4位となり、これが4大会連続の出場となる福原は、「今回が一番苦しい五輪だった」と語る。

「4年前のロンドンから受けるプレッシャーがすごくありました。また最年長ということもあるので、勝っても負けても私が動じたらダメだと毎日強く思っていたので、絶対に泣かないと決めていたんですけど、最後は我慢ができなくて泣いちゃいましたね(笑)」

 2大会連続の出場となった石川は、メダルを狙ったシングルスでまさかの初戦敗退(シードのため2回戦)。そこから気持ちを立て直し、団体では全勝と、エースとしてチームをけん引した。ドイツに敗れた翌日も、練習前に「最後まで頑張ろう」と、敗戦の責任を感じている2人に声をかけた。

「私の中では、今回の銅メダルの方が前回よりも重く感じます。シングルスでは初戦で負けてしまいましたし、団体でも苦しい試合がたくさんありました。それでもこうしてメダルが取れましたし、団体では全勝で終わらせることができたので、自信になりましたね。4年後もチームを引っ張れる選手でいたいと思います」

 初出場の伊藤にとっては、五輪の怖さを味わう大会ともなった。その中で感じたのは「先輩たちの頼もしさ」だった。次回は五輪経験者として、チームをけん引する役割も求められてくる。

 村上監督が「70点くらい」と評価したように、今大会は日本チームにとって決して最高の成績だったわけではない。それでも、ショックの大きい敗戦から立ち直り、銅メダルを獲得した彼女たちの強さは、称賛されて然るべきだろう。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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